エヌ氏の成長・円錐

小胞輸送研究をはじめて18年めの分子神経科学者の日々雑感

2009-01-01から1年間の記事一覧

3つの原理

昨日が冬至で今日は年賀状書き。でも、今年のうちにやっておくことがまだ残っているので、冬休み気分にはなれそうもない。 ローレンス・トーブの「3つの原理」を読む。3つの原理―セックス・年齢・社会階層が未来を突き動かす作者: ローレンス・トーブ,神田…

21世紀最初の天才数学者

民主党政権の科学技術政策の行方について、特に先月始まった仕分け以来の科学コミュニティ(もちろん自分や身の周りも含めて)の喧々囂々はすごいものがある。(たとえば、http://mitsuhiro.exblog.jp/12991996/)こういうことは同時代の意見として記録する…

世界のジェネレーターは見えない

朝、バスを待っていると、北大路の街路樹が8割がた葉を落とし、道の向こうにある和菓子屋さんが小豆を炊いている煙が見えるようになった。来た冬を感じる、同時に暖かくもある光景だ。 ナシーム・ニコラス・タレブの「ブラック・スワン」を読む。ブラック・…

知の巨人と知の怪物

愛読している「レジデント初期研修用資料」の「努力は報われないほうがいい」の記事を読んで考え込んでいる。 http://medt00lz.s59.xrea.com/wp/archives/558 「頑張った人が、「頑張り」に見合った承認を求めると、世代を重ねるごとに、「頑張り」のコスト…

メタ宗教としての仏教

ほぼ1ヶ月ぶりに卓球に行く。休み休み1時間半やっていると汗が吹き出してくる。爽快。 河合隼雄X中沢新一の「仏教が好き!」を読む。仏教が好き!作者: 河合隼雄,中沢新一出版社/メーカー: 朝日新聞社発売日: 2003/08/06メディア: 単行本購入: 1人 クリック…

歴史の方程式

シカゴから昨日帰国した。今度の学会は収穫が多かった。7年半前に今の研究室に加わった時に新たにテーマを立ち上げたのだが、そのときに考えたアイデアにはほぼひととおり手をつけ終わり、当たったものにさらに工夫を加える形で発展させてきた。1、2年前…

神経発生学の哲学

Society for Neuroscienceは3万人以上の参加者を集めて5日間開かれる。今は4日目の朝。時差ぼけもとれていろいろ楽になったところだ。まずはとにかくlectureのレベルが高いので、聞いているだけで脳が揺さぶられてくる。おまけに長丁場なので、お昼過ぎな…

地球移動作戦

SF

明日からSociety for Neuroscienceがあるので、今朝学生さんと2人でシカゴにやってきた。まずは眠気覚ましにシカゴ美術館にいき、その後繁華街をぶらぶらしていたら、5時を過ぎて急に体感温度がぐんぐん下がってきたので、晩御飯はクラムチャウダーを食べ…

チキントークなアメリカ

たぶんこのブログを読まれている方のかなりの割合は、Ryohei氏の有名なブログを見ておられるのですでにご存知かとも思いますが、多少は両者の守備範囲がずれているかもと思い、紹介させていただきます。http://www.youtube.com/watch?v=yL_-1d9OSdkこの連休…

萩の花と新リア王

この連休は萩の花が見ごろである。うちの狭小な庭も今はそのおかげで寂びた華やかさがある。 高村薫の「新リア王」を読む。新リア王 上作者: 高村薫出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2005/10/26メディア: 単行本購入: 4人 クリック: 59回この商品を含むブログ…

Rhythms of the Brain

今週の後半はすっかり秋の空気に入れかわって、雲も高くちぎれて流れるようになった。いい季節なのだが、研究者にとっては科研費の申請書の季節でもあり、今年は特に大幅にルールが変わったこともあって、いろいろ調整に時間がかかっている。シルバーウィー…

デスティニー・ベクトル

最先端プロジェクトの採択課題のリストをみながら、ふーむなるほどとか思っていたら、いきなり物理学科の同級生の名前が出てきて驚いた。 生協書籍部でぶらぶらしていたら、日経サイエンスの10月号の表紙に「存在確率マイナス1」と書いてあり、「おっ」と…

研究者の仕事術

火曜日にIさんのところでシグナル伝達と形態変化の話をする。後半はSさんに最近のデータを話してもらっていろいろアドバイスをもらう。いわく、もう少し空間情報を考えた解析も試してみたらいいのでは。いわく、これはどうも一度非線型多変量解析を試してみ…

衆院選の21世紀と数学の20世紀

衆院選の結果が出て、民主党が308議席を獲得して圧勝。私は民主支持だが、ここまでの大勝がいいことなのかと不安もある。ただ、政権運営に慣れてない民主党がそれなりにやっていくためには、この数が力にあるとも考えられるので、いいことかもしれない。…

堀井憲一郎は山口瞳である

堀井憲一郎の「落語論」を読む。落語論 (講談社現代新書)作者: 堀井憲一郎出版社/メーカー: 講談社発売日: 2009/07/17メディア: 新書購入: 3人 クリック: 21回この商品を含むブログ (52件) を見る「情報考学」で激賞されていたので、どうしても読みたくなっ…

英雄ではないダーウィンについて

さすがに朝方は涼しくなってきて、6時前に新聞を取りに玄関のドアを開けて出て行くと、肩をひんやりと風が抜ける。 デズモンドとムーアの「ダーウィンが信じた道」を読む。ダーウィンが信じた道―進化論に隠されたメッセージ作者: エイドリアン・デズモンド,…

権力は腐敗する。絶対権力は絶対的に腐敗する

昨日は昼過ぎから、統合失調症の分子メカニズムの権威AS先生のセミナーを聞きに行ってきた。2000年のAS先生によるDISC1の発見は「統合失調症のような心の病についに分子生物学が手をかけられるようになった」という驚きをもって受け止められた。AS先生のセミ…

Accepted causality can be accepted?"

本郷の寿司屋に穴子を食べに行く話が、いつの間にか工学部でのワークショップということになって、powerpoint作りにねじを巻くことになった。"Morphodynamics and signal processing in a cell"。これは完全にサイドワークなので、M.Y.先生のようにひたすら…

光の場、電子の海

Iさんとの会話。 「ブライアン・グリーンの本にエントロピーは未来に向かっても増大するけど、物理法則は時間反転について対称だから、過去に向かっても増大するって書いてあったんだけど、それってほんと?」 「うん、本当だ」 「なんで?」 「それは、現在…

歴史改変SF&70年代風のハードボイルド

SF

今日は台風のせいか何とも蒸すなあと思いながら仕事をしていたが、帰ってニュースを見たら兵庫や岡山で大変なことになっている。そういえば暑さを実感するまもなく立秋になってしまった。 マイケル・シェイボンの「ユダヤ警官同盟」を読む。ユダヤ警官同盟〈…

アット・ザ・ヘルム

おとといの晩に学生時代からの友人Iさんと百万遍で3軒はしごして1時過ぎまで飲んだ。Iさんは私達の世代を代表する物理学者の一人で計算機物理学の世界ではトップエリートさんだ。その彼が生ビールで乾杯するやいなや「いや実は今、生命とは何かを考えてい…

revisited

木曜日に聞いたMoo Ming Pooのレクチャーがずっと頭の中で残響を繰り返している。Moo Ming Pooは部地理畑出身の神経科学者で、「セカンドメッセンジャーのレベル変化による成長円錐ガイダンスの反転」「spike-timing dependent plasticity」など多くの追随者…

あぶないsocial cognitive neuroscience

あさってのB教授へのプレゼンに向けてpowerpoint作りを進めた。何しろRap1の第一人者なので、どこから爆撃されるかわからない。基本は守備的に行きつつ、要所で踏ん張りたい。 藤井直敬の「つながる脳」を読んだ。つながる脳作者: 藤井直敬出版社/メーカー: …

生命とは?物質か!

衆議院が解散された。いよいよ総選挙だ。40日もあるので、自民党もあの手この手で仕掛けてくるだろうが、よほどのハプニングがない限り民主党の優位は動かないだろう。10年来の小沢一郎ファンとしてはわくわくする気が3分の2、本当に民主党に政権担当…

甦る怪物

研究は不思議なもので、進み方にかなりの波がある。1年か2年に1回くらい、何をやってもうまくいく、あるいは何を考えても上手く当たる(という気がする)ときがある。そのときにどれくらい根を詰められるかが、いい仕事をする大事な鍵だと思っているので…

直木賞受賞おめでとう

まずは「空飛ぶ馬」以来の熱心なファンとして、北村薫さんの直木賞受賞におめでとうを言いたい。 報道を見ると、「空飛ぶ馬」は89年の作なので、ちょうど20年が経つことになる。特に「円紫さん」シリーズがお気に入りで、個人的ベスト3は、「空飛ぶ馬」…

周辺に核心がある

今、とても知りたいことがある。学生さんとある蛋白質のリン酸化を調べているのだが、どうもリン酸化と機能の間に非常に奇妙な関係がありそうな気がしてきている。残念なことにその領域の立体構造はまだ決められていないので、そのメカニズムが具体的に想像…

カドヘリンと強烈な努力

昨日は研究科の若手の会の飲み会で、出町商店街のSに行った。結構しっかり飲んで4千円とリーズナブル。飲み会の8割は、W研で鳥の歌の学習の研究をしているAさんとひたすら「神経科学を根本的に変えるにはどうしたらいいか」を語り尽くした。AさんはCDBのセ…

否定と流動

最近、イギリスのSさんとメールのやりとりをしている。お互い論文で名前を知っていただけの仲なので、最初は「こんなこと書いてもいいのかなぁ」という感じだったが、お互いの興味がほとんど一致している(幸い手法が異なる)ことがだんだんわかってきて、打…

ライフワークをもたない

昨年参加した国際神経発生大会(ISDN)が、来年6月リスポン近郊の港町Estorilで開催されるという情報が公開された。まだspeakersは未定だが、ポルトガルは激しく魅力的である。ファド、リビエラ海岸、米中心のポルトガル料理。早速、同じ研究科のUさんを誘っ…