エヌ氏の成長・円錐

小胞輸送研究をはじめて18年めの分子神経科学者の日々雑感

2011-01-01から1年間の記事一覧

最終講義

今日は朝から研究室の大掃除。赴任以来手つかずだった前任、前々任の先生方の不用品を整理してかなりすっきりする。慰労会でピザを食べながら、「今日は学生さんもいい顔をしている」と思った。 内田樹の「最終講義」を読む。最終講義?生き延びるための六講 …

仏教における愛の否定

今日の午後は学生達を自宅に呼んでの忘年会。午前中は賀状書き。絵に描いたような年の瀬だが、今年やることはまだまだ残っているのも例年どおり。 呉智英の「つぎはぎ仏教入門」を読む。つぎはぎ仏教入門作者: 呉智英出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2011/…

長いフレーズの作り方と音の自在な配置

ここのところの冷え込みで、池の向こうの紅葉が急に鮮やかになった。 小澤征爾と村上春樹の「小澤征爾さんと、音楽について話をする」を読む。小澤征爾さんと、音楽について話をする作者: 小澤征爾,村上春樹出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2011/11/30メディ…

自由意志、局所性、決定論

もみじはわからないが、銀杏は関東の方がきれいかもしれないと最近は思う。 筒井泉の「量子力学の反常識と素粒子の自由意志」を読む。量子力学の反常識と素粒子の自由意志 (岩波科学ライブラリー)作者: 筒井泉出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2011/04/28メ…

心は脳の中だけに閉じ込めておくことはできない

アイルランド音楽と朗読を聴きに行った。久しぶりに漱石の「夢十夜」の文章に触れた。 河野哲也の「意識は実在しない」を読む。意識は実在しない 心・知覚・自由 (講談社選書メチエ)作者: 河野哲也出版社/メーカー: 講談社発売日: 2011/07/12メディア: 単行…

語りえぬものを語る

昨日は娘のリクエストで「もちもちの木」にラーメンを食べに行った。なかなかおいしい。 野矢茂樹の「語りえぬものを語る」を読む。語りえぬものを語る作者: 野矢茂樹出版社/メーカー: 講談社発売日: 2011/07/08メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 32回こ…

問題を言葉で扱う

水曜日に熊本大のK先生の生命倫理の講義を聞く。後半は「心とは何か。体と別に心はあるのか」という話題をめぐる現在進行形の自分の考えを力説されて、珍しく熱気のこもった討議になった。慰労の食事会も大変楽しかった。 ペリー・メーリングの「金融工学者…

形式的なものと直観的なものとの弁証法

反貧困のデモが世界各地で起きていることが盛んに報じられている。これはどういう流れなのかとできるだけ巨視的に見ようとしている。 パレ・ユアグローの「時間のない宇宙」を読む。時間のない宇宙―ゲーデルとアインシュタイン 最後の思索作者: パレユアグロ…

最後の古典幾何学者

例年のごとく科研費の申請書書きのシーズン。いろいろメモを書き溜めておいたので、二度ほど部屋に立てこもってコーヒーで目をさまして集中して第1稿を仕上げる。 シュボーン・ロバーツの「多面体と宇宙の謎に迫った幾何学者」を読む。多面体と宇宙の謎に迫…

反証可能性理論の土台

水曜日の生命倫理学で加藤先生の講義を聞く。1)生命倫理の問題は、既存の社会制度(それは法体系により支えられている)の外部に、新しい技術によりもたらされた空白地帯から生じる 2)法体系には、大陸型の成文法と英米型の判例法があり、上記の空白に速…

プランBと意味のある失敗

昨日で学会も終わり。京都の町は適正サイズだとやはり思う。 マリンズ+コミサーの「プランB」を読む。プランB 破壊的イノベーションの戦略作者: ジョン・マリンズ,ランディ・コミサー,山形 浩生出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2011/08/25メディア: 単行…

いかにして問題をとくか

このブログを書くそもそものきっかけになった大学時代からの友人と自由が丘のワインバーに行く。自由が丘は十数年前に一度来たきりなので、こんなに道が狭い町だったかと驚いた。 ポリアの「いかにして問題をとくか」を読む。いかにして問題をとくか作者: G.…

エレガントな宇宙の不在と希望

SF

午前中、膜融合の専門家に会って常日頃疑問に思っていることをいろいろ教えてもらった。おかげでイメージング技術の限界で手が出せないあたりがかなりはっきりイメージできた。 生物学研究者出身のSF作家 瀬名秀明の第一短編集の表題作が「希望」。この手のS…

なぜ「語りえぬものについては、沈黙しなければならない」のか

昨日は田町で会合がありでかける。暑さがぶりかえしたねぇというのがお互いの挨拶代わりで、新潟から来られた先生は、温度は同じくらいでも空気が違うと言われる。 野矢茂樹の「『論理哲学論考』を読む」を読む。ウィトゲンシュタイン『論理哲学論考』を読む…

不確実性の不快に耐える

昨日の研究科講演会の帰りに大学の建物の脇を自転車で過ぎると、虫の音が聞こえる。暑い暑いと思ってもいつのまにか秋が来るのはいつもと同じ。 ロバート・バートンの「確信する脳」を読む。確信する脳---「知っている」とはどういうことか作者: ロバート・…

隠れていた宇宙

今朝は涼しい風で目が覚めた。久しぶりに近くを散歩する。秋らしく雲が高くにかかっている。 ブライアン・グリーンの「隠れていた宇宙」を読む。隠れていた宇宙 (上)作者: ブライアン・グリーン,竹内 薫,大田 直子出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2011/0…

責任という虚構

8日間の夏休みの3日目。昨日はずっと自宅で読書。 小坂井敏晶の「責任という虚構」を読む。責任という虚構作者: 小坂井敏晶出版社/メーカー: 東京大学出版会発売日: 2008/08/01メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 234回この商品を含むブログ (32件) を見…

ベイズ統計と統計物理

この間の日曜日に船橋まで玉村豊男展を見に行った。絵を買う元気はなかったので画集を買って眺めている。 伊庭幸人の「ベイズ統計と統計物理」を読む。岩波講座 物理の世界 物理と情報〈3〉ベイズ統計と統計物理作者: 伊庭幸人出版社/メーカー: 岩波書店発売…

クレタ島と飛行機会社のストライキ

クレタ島での学会でギリシアにはじめてやってきた。リゾートホテルに缶詰だが食事以外はほとんどまとまった休みなしで土曜日の昼過ぎから火曜日の昼過ぎまでトークとポスターがあるのでマラソンをしている感じである。EMBO wokshopってこんなだっけ、と日本…

数学する遺伝子

欧米の報道では福島原発はmeltdownしたという伝えられ方をしていたが、今日の午後のニュースは東電もそれを認めたという意味なのだろうか。学術会議の物理学部会からのお知らせなども来ているが、歯がゆい話だと思う。 キース・デブリンの「数学する遺伝子」…

はじめての宗教論

震災で被害を受けて今もつらい思いをしている全ての人達にお見舞いの気持ちを伝えたい。今回の震災の報道に長時間接していると強い無常観を感じて普通の生活を送るのがつらい気持ちがしていたが、そろそろ何とかしたい。折から、前の研究室で指導していた学…

夜中に犬に起こった奇妙な事件

5日間ほどイギリスから共同研究者が滞在していっていろいろ議論ができた。scienceの話はもちろん大変面白かったが、ベネチアの名家(foundersではないが50人委員会のメンバーらしい)出身という彼の話を聞いていると、ヨーロッパの上流階級の人間がどういう…

雑文集

火曜日からしばらく外国のお客さんがラボに滞在するので、ホームパーティー用にネットで少しいいイタリアワインを注文する。知り合いの先生から「彼はナイスガイだ」と聞いてはいるがどうなることやら。 村上春樹の「雑文集」を読む。村上春樹 雑文集作者: …

不可能、不確定、不完全

今日は昼間は温度が上がり、庭の黄水仙がきれいに見える。海棠を買おうと話しているのだが、どこに植えるか話がまとまらない。 ジェイムズ・D・スタインの「不可能、不確定、不完全」を読む。不可能、不確定、不完全―「できない」を証明する数学の力作者: ジ…

コンピュータで代替できない人間らしい能力とは抽象化だ

ニセコに移動。目抜き通りのあたりは日本離れした雰囲気でテレビでみたとおり。ただし、今日滑った人に聞くとここ数日は雪が降らず自慢のパウダースノー状態ではないそうだ。 新井紀子の「コンピュータが仕事を奪う」を読む。コンピュータが仕事を奪う作者: …

量子の海、ディラックの深淵

随分日が長くなったが、今日は風が強く散歩日和ではなかった。 グレアム・ファーメロの「量子の海、ディラックの深淵」を読む。量子の海、ディラックの深淵――天才物理学者の華々しき業績と寡黙なる生涯作者: グレアム・ファーメロ,Graham Farmelo,吉田 三知…

情報エネルギー変換

11月にNature Physicsに出たという「情報エネルギー変換」の実験的実証の論文の話を目にしてすっかり感嘆した。http://www.chuo-u.ac.jp/chuo-u/pressrelease_files/kouho_926d762ef5d729c7544d1276739468c5_1289788403.pdfしかも、その「情報エネルギー変換…

エレーヌ・グリュモーを聴きに行く

先週は水曜日に上野の文化会館でエレーヌ・グリュモーを聴いた。演目は ・モーツァルトのピアノソナタ9番 ・ベルクの作品1 ・リスト ・バルトーク エレーヌ・グリュモーは聴覚と色覚の共感覚を持つピアニストで そのせいか他では聴いたことのない音色だ、と…

人間はガジェツトではない

先週は仙台と和光に出張。仙台は雪が舞っていた。 ジャロン・ラニアーの「人間はガジェツトではない」を読む。人間はガジェットではない (ハヤカワ新書juice)作者: ジャロンラニアー,井口耕二出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2010/12/16メディア: 新書購入…

回路網の中の精神

昨日は娘の代わりに湯島神社に絵馬を掛けに行った。帰りにシネスイッチ銀座にまわって「シチリア、シチリア」を見た。 マンフレート・シュピッツアーの「回路網の中の精神」を読む。脳 回路網のなかの精神―ニューラルネットが描く地図作者: マンフレートシュ…