エヌ氏の成長・円錐

小胞輸送研究をはじめて18年めの分子神経科学者の日々雑感

研究者の仕事術

火曜日にIさんのところでシグナル伝達と形態変化の話をする。後半はSさんに最近のデータを話してもらっていろいろアドバイスをもらう。いわく、もう少し空間情報を考えた解析も試してみたらいいのでは。いわく、これはどうも一度非線型多変量解析を試してみたのがいいような気がする、など。Iさんは哲学がはっきりあるので、一言一言が重い。


島岡要の「研究者の仕事術」を読む。

やるべきことが見えてくる研究者の仕事術―プロフェッショナル根性論

やるべきことが見えてくる研究者の仕事術―プロフェッショナル根性論

いろいろ感想はあるのだろうが、これは覚えておかなくてはと印象に残ったのは2点。

ひとつは、PIがラボメンバーにテーマをふる時に、その人の強みを把握したうえでふるべきだ、というくだり。それはそのとおりなのだが、特に大学院に来たばかりの学生さんの伸びしろを考えるのが既に十分難しいので、(おまけにそんなにテーマにバラエティがあるわけでもないので)なかなか難問である。でもまあ、それを意識するだけでも一定の効果はありそう。

もうひとつは、大事なのはコメント力ではなく、フィードバック力だ、というくだり。この場合のフィードバック力とは、たとえば投稿前の論文原稿を渡されて個人的感想を言うのではなく、レフリーの身になってどうすればよりpublishableになるかという具体的な指摘をするように心がける、という意味だが、これもなかなかさぼりがちなので、心がけたい。

島岡さんが力説しているのは、「研究者は「長所の強化」に専心してこそ、生産的な”強い”人生を送ることができる」という点だ。これは現代においては動かしようのない事実だと思う。一方で、そういうカツマー的生き方にどうしても何かがついていけず、メンタルヘルスに問題を抱える人が多いのも現代の事実である。


島岡さんのこの本を読んでいて連想したのは、30年前に読んだ入江伸(灘校の合格率が異常に高かった入江塾の塾長)の書いた受験のセルフヘルプ本だった。

当然のことかもしれないが、根性論は30年くらいではおかしいほど変わらない。