エヌ氏の成長・円錐

小胞輸送研究をはじめて18年めの分子神経科学者の日々雑感

長い19世紀と神経科学の歴史

数字上の19世紀は1801年から1900年までだが、1789年のフランス革命から1914年の第1次世界大戦の始まりまでを「長い19世紀」とまとめて考えると腑に落ちるという話がある。一般的なレベルで個人が意識されるようになる端緒としてのフランス革命にはじまり、人の本性の最悪なところが見えてしまう世界大戦までの126年だ。Rise and fall of individualsという言い方もできる。

この「長い19世紀」の黄昏に、神は死んで(ニーチェ)、精神分析と現代的な意味での神経科学が立ち上がったのは偶然ではないだろう。(そんなものがあるとしたら)現代神経科学の中心地はアメリカ合衆国だが、フーコー的な郊外の隔離型精神病院→ヨーロッパから一斉に移動した人たちにより精神分析が神経学を占拠→1970年あたりからの神経伝達物質の同定に代表される物質中心主義的神経科学への大移動→意識の数理モデルとデータサイエンスというきれいな4段階の切り替わりは「長い19世紀」が準備した、ということをとりあえずの作業仮説として少しばかり頭を整理してみたい。(今後追加する予定)