エヌ氏の成長・円錐

小胞輸送研究をはじめて18年めの分子神経科学者の日々雑感

2008-01-01から1年間の記事一覧

2008年に読んだ本ベスト10

家族は2日まで帰省中で、ゆったりとした年の暮れ。日記を読み返して2008年に読んだ本ベスト10を作る。来年も同じくらいすばらしい本に会えるといいなあ。1.時は流れず(大森荘蔵) 新しいアイデアを納得させてしまうすばらしい文章力だけでもすごいが、そ…

くらやみの速さはどれくらい

2004年のネビュラ賞受賞のSF「くらやみの速さはどれくらい」(エリザベス・ムーン)を読んだ。くらやみの速さはどれくらい (ハヤカワ文庫 SF ム 3-4)作者: エリザベス・ムーン,小尾芙佐出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2008/12/10メディア: 文庫購入: 3人 …

比叡山の雪化粧

今朝ふと比叡山を見上げると頂上の南側がうっすらと雪化粧していた。冬の空気は澄んでいるのでいつもより稜線がくっきり見える気がする。年の瀬の気分になる。昨日で大掃除も忘年会も済んで、今日からは読書三昧の冬休みの予定。 意識や時間についてある程度…

うごメモはてな+街場の現代思想

上の子も下の子ももう一台DSが欲しいそうなので、応募。http://d.hatena.ne.jp/ugomemohatena/20081218/1229578200 神戸大のSさんから来学期の講義を頼まれた。「分子イメージングの最近の話題」というタイトルの全4回の大学院博士課程の講義の一コマ分。英…

起きていることはすべて正しい

学生時代からコーヒーに凝っている。家でネットをするようになってまずしたのは、ネット上に店を出しているコーヒー屋を次々に試してみることだった。この2、3年はこのドイコーヒーで固定している。 http://www.doicoffee.com/家内がドイコーヒーの12月…

「二分心」理論と精神分析

今週は山あり谷ありで、何とか無事に週末にたどりつけたという感じだ。研究室では、年に二度、メンバー一人一人が教授と面談して、将来構想から人間関係の悩みまでひととおり話すというシステムがある。いい仕組みだと思う。それなりに相談したいことをまと…

日本語が亡びるとき

先週の神戸の学会での発表で一区切りつき、学生のGさんと今後の方針を1時間くらいかけてじっくり話す。話は半分くらいできたが、もうふた山はありそうだと話す。結構頑張りがきく子なので、このまま投稿まで無事にいってくれるといいのだが。この辺りからが…

学びからの逃走・労働からの逃走

内田樹の「下流志向」を読む。下流志向──学ばない子どもたち、働かない若者たち作者: 内田樹出版社/メーカー: 講談社発売日: 2007/01/31メディア: 単行本購入: 6人 クリック: 96回この商品を含むブログ (666件) を見る題名から何となく、格差社会のあれこれ…

学会とユング

神戸での分子生物学会・生化学会に行ってきた。シンポジウムのトークも無事に終わり、共同研究のきっかけもつかめるなど収穫の多い学会だった。昨日は、元町の中華街にある「小小心緑」で昔馴染みと夕食。S薬科大は、教室あたり年800万円の研究費がもらえ…

intravital imaging

今日は、Cancer Research UKの若きエース(34歳!)ESさんのセミナーがあった。intravitalでこんなきれいな映像が撮れるの、と驚くほどの美しさ。この間の「視る生物学」でも感心したが、本当に最近のimaging biologyの進展はすごい。テーマは癌の転移。生…

構造主義と禅

内田樹の「寝ながら学べる構造主義」を読む。寝ながら学べる構造主義 ((文春新書))作者: 内田樹出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2002/06/20メディア: 新書購入: 43人 クリック: 418回この商品を含むブログ (340件) を見る構造主義の本は高い上に難しくて面…

進化の特異事象

ド・デューブの「進化の特異事象」を読む。星3つ半。進化の特異事象作者: クリスティアン・ド・デューブ,中村桂子,サイト編集室出版社/メーカー: 一灯舎発売日: 2007/01/07メディア: オンデマンド クリック: 5回この商品を含むブログ (1件) を見るこの本は…

物理学者、ウォール街を往く

昨日は、下の子を連れて研究室でのバーベキューに出かけた。研究室が世話役をしている「がん若手の会」の今年の参加者のコネで高級山形牛5kgがどんと手に入ったので、季節外れの外での宴会となった。肉ばかり食べても飽きないほどおいしかった。満足。エマニ…

超「超」整理法

野口悠紀雄の「超「超」整理法」を読む。超「超」整理法 知的能力を飛躍的に拡大させるセオリー作者: 野口悠紀雄出版社/メーカー: 講談社発売日: 2008/09/18メディア: 単行本購入: 5人 クリック: 162回この商品を含むブログ (133件) を見るあの「超整理法」…

冬至草

SF

京大医学部で行われた「脳のセミナー」に初めて出てみる。今日の演者は東北大のM先生。題目は「問題解決の視点からの前頭葉機能」。3時間にわたっての、途中質問ありで徹底的に突っ込んでの講演である。問題から解答への前頭前野での状態転移において、ある…

時間と存在

連休最終日。朝から大森荘蔵の「時間と存在」を読む。時間と存在作者: 大森荘蔵出版社/メーカー: 青土社発売日: 1994/03/01メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 1回この商品を含むブログ (9件) を見る「時は流れず」に接続する大森本。第一章は時間論。第二…

櫻の園

昨日の午後は、三条まで「櫻の園」を観に出かけた。90年に公開され高い評価を得た同名前作のリメイク。監督も同じ中原俊。主演は福田沙紀。どこかで見たことがあると思っていたら、2年前の「拝啓、父上様」で舞台となる料亭の娘役で出ていた女優だった。前作…

描きなおされたヒルベルト数学

今週は木・金と、NS大のシンポジウムに呼ばれて話をしてきた。イメージングという共通言語があったので、懇親会やティータイムでの話がはずんで、新しい知り合いが何人かできたのはうれしいことだった。懇親会に出ても、つい知った顔どうしで話してしまう方…

容疑者ケインズ

小島寛之の「容疑者ケインズ」を読む。容疑者ケインズ (ピンポイント選書)作者: 小島寛之出版社/メーカー: プレジデント社発売日: 2008/08/01メディア: 単行本購入: 18人 クリック: 229回この商品を含むブログ (38件) を見る私は小島寛之の数学本を愛読して…

バラバシ教授の講演

今週の木曜日に奈良でトークをするので、週末は原稿を家に持って帰って手を入れたりしていた。一度済んだ仕事なので、新鮮な視点で見直すことができたせいか、その次の仕事についてひとつアイデアが浮かんだ。見直しても、とりあえず筋は通っていそうである…

時は流れず

日曜の朝というのに、Brain Science PodcastでBuszakiの「脳のリズム」のインタビューを聞いて活性化されてしまった。大森荘蔵の「時は流れず」を読む。時は流れず作者: 大森荘蔵出版社/メーカー: 青土社発売日: 1996/08/01メディア: 単行本購入: 2人 クリッ…

Uさんの仁科賞

昨日、帰宅して新聞を読んでいたら、物理学科の同級生で仲良くしていたUさんが、今年の仁科賞を受賞したという記事を見つけて、大いに驚いた。仁科賞は、朝永振一郎のボスだった仁科芳雄の名を冠した日本物理学界最高の賞である。それを45歳でとったのだから…

小松左京の多面体

来年度は新人さんが4人来ることになっているが、自分のグループにそのうちの1人をもらうかどうかの心積もりをする時期になった。そのために、昨年うまく進んだ細胞内輸送の路線で、少し違った分子に手を広げようと考えて、新人さんのテーマを立ち上げるた…

医療崩壊

小松秀樹の「医療崩壊」を読む。医療崩壊―「立ち去り型サボタージュ」とは何か作者: 小松秀樹出版社/メーカー: 朝日新聞社発売日: 2006/05メディア: 単行本購入: 7人 クリック: 180回この商品を含むブログ (147件) を見る研究室に脳外科から来ている超優秀医…

ダーウィンのジレンマを解く

マーク・カーシュナーとジョン・ゲルハルトの「ダーウィンのジレンマを解く」を読む。ダーウィンのジレンマを解く―新規性の進化発生理論作者: マーク・W・カーシュナー,ジョン・C・ゲルハルト,赤坂甲治,滋賀陽子出版社/メーカー: みすず書房発売日: 2008/08/…

崩壊と再生の物語

シルヴィア・アサーの「ビューティフル・マインド」を読む。ビューティフル・マインド 天才数学者の絶望と奇跡作者: シルヴィアナサー,塩川優出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2002/03/15メディア: 単行本購入: 7人 クリック: 171回この商品を含むブログ (49…

上皮間葉転換とがん幹細胞

上の子は1年半くらい前から編み物教室に行っている。夏くらいからコンクールに出すんだといって、変わった靴下を編んでいた。いろいろな飾りがついていて、それぞれことわざを表している(「猫に小判」とか)のが本人苦心のアイデアらしい。それが昨日知ら…

新ネットワーク思考

アルバート=ラズロ・バラバシの「新ネットワーク思考」を読む。評価は4つ星。新ネットワーク思考―世界のしくみを読み解く作者: アルバート・ラズロ・バラバシ,青木薫出版社/メーカー: NHK出版発売日: 2002/12/26メディア: 単行本購入: 40人 クリック: 594…

20年後のワトソン

昨日の9時からのNHKのニュース番組で、DNA二重らせんの発見者の一人ジェームズ・ワトソンの来日が報道され、立花隆によるインタビューが流された。生物学のhubに存在する大立者の話なので、興味深く聞いた。 ・近い将来に全ての人が自分のゲノムを知る時代…

トリックのレベルはさらに上だが

楽しみにしていた東野圭吾の新作「聖女の救済」を読んだ。聖女の救済作者: 東野圭吾出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2008/10/23メディア: 単行本購入: 11人 クリック: 60回この商品を含むブログ (249件) を見る快作と言っていいが、評価はちと難しい。トリ…