エヌ氏の成長・円錐

小胞輸送研究をはじめて18年めの分子神経科学者の日々雑感

生物学

認知神経科学の枠組みで、意識における不確定性原理の相当物は発見できるだろうか

tnakamr.hatenablog.com 以下は、リー・スモーリンの「迷走する物理学」の一節。 「最近は、量子重力の研究をしている者はたいていが、因果性こそが根本だと−したがって、空間の概念が消えた水準でも意味をなすと−信じている。量子重力への取り組みで、これ…

確率は、反復の枷を逃れて一度きりのものになる

夕日が裏の森の紅葉を照らし出しているのを見ると、いろいろなもやもやを忘れる。 シャロン・バーチュ・マグレインの「異端の統計学ベイズ」を読む。異端の統計学 ベイズ作者: シャロン・バーチュマグレイン,Sharon Bertsch McGrayne,冨永星出版社/メーカー:…

オートファジーの謎

朝、思い立って湯島天神にでかける。季節がらか、9時過ぎというのに親子連れの参拝客が沢山いた。 水島昇の「オートファジーの謎」を読む。細胞が自分を食べる オートファジーの謎 (PHPサイエンス・ワールド新書)作者: 水島 昇出版社/メーカー: PHP研究所発…

数学-物理学-生物学

1) 数学が恒真文によって定義づけられるのであれば、数学の全内容は「AはAである」の一文に帰するのか?直観的にはそうでないと感じられるが、その根拠は何か? 解答の手がかり:「数学―その形式と機能」S.マックレーン ・数学は形式的なネットワークである…

不均衡進化論

M研のGTP loading assayのプロトコールを熟読したのだが、どうも細部に自信がもてず、白金のK大まで教わりに行くことにした。「絵解きシグナル伝達入門」で有名なH先生とゆっくりお話しするのはほぼ10年ぶり。歳月の流れの速さにびっくりする。 古澤満の「不…

分子進化のほぼ中立説

来年度の大学院講義名が「イメージング基礎」と決まった。ところが教科書指定するはずの"Fundamentals of Light Microscopy and Electronic Imaging 2ND Edition"がようやく先月出たばかりでいつ手に入るのかわからない。ちょっと不安。 太田朋子の「分子進…

歴史の方程式

シカゴから昨日帰国した。今度の学会は収穫が多かった。7年半前に今の研究室に加わった時に新たにテーマを立ち上げたのだが、そのときに考えたアイデアにはほぼひととおり手をつけ終わり、当たったものにさらに工夫を加える形で発展させてきた。1、2年前…

英雄ではないダーウィンについて

さすがに朝方は涼しくなってきて、6時前に新聞を取りに玄関のドアを開けて出て行くと、肩をひんやりと風が抜ける。 デズモンドとムーアの「ダーウィンが信じた道」を読む。ダーウィンが信じた道―進化論に隠されたメッセージ作者: エイドリアン・デズモンド,…

生命とは?物質か!

衆議院が解散された。いよいよ総選挙だ。40日もあるので、自民党もあの手この手で仕掛けてくるだろうが、よほどのハプニングがない限り民主党の優位は動かないだろう。10年来の小沢一郎ファンとしてはわくわくする気が3分の2、本当に民主党に政権担当…

心は遺伝子の論理で決まるのか

勤務先の大学院には副指導教員という制度があり、いわゆる指導教員のほかに2人の教員が研究や生活面などの相談にのることになっている。今年は博士1年の学生さんの副指導にあたることになり、今日早速1時間ほど話をした。その学生さんは神経回路の研究を…

Nature via Nurture

朝、不意に思い立って、嫁さんと龍安寺に桜を見にでかけた。あの石庭に前方からかぶさるようにして枝垂桜が咲いている写真を見たとき、「次は桜の季節に来よう」と思ったのを思い出したからだ。枝垂桜は満開で、石庭にはなやかな蔭を落としている。少しばか…

利己的な遺伝子

リチャード・ドーキンスの「利己的な遺伝子」を読んだ。" title="利己的な遺伝子 ">利己的な遺伝子 作者: リチャード・ドーキンス,日高敏隆,岸由二,羽田節子,垂水雄二出版社/メーカー: 紀伊國屋書店発売日: 2006/05/01メディア: 単行本購入: 27人 クリック: …

ダーウィニズムという万能酸

冬休みの前に、生協の本屋で「心は遺伝子の論理で決まるのか」という本を見つけ、どうも気になって買ったのだが、そのままになっていた。しばらく前から読み始めたら、最初の方で、やたらダニエル・デネットの「ダーウィンの危険な思想」に言及している。ど…

進化の特異事象

ド・デューブの「進化の特異事象」を読む。星3つ半。進化の特異事象作者: クリスティアン・ド・デューブ,中村桂子,サイト編集室出版社/メーカー: 一灯舎発売日: 2007/01/07メディア: オンデマンド クリック: 5回この商品を含むブログ (1件) を見るこの本は…

ダーウィンのジレンマを解く

マーク・カーシュナーとジョン・ゲルハルトの「ダーウィンのジレンマを解く」を読む。ダーウィンのジレンマを解く―新規性の進化発生理論作者: マーク・W・カーシュナー,ジョン・C・ゲルハルト,赤坂甲治,滋賀陽子出版社/メーカー: みすず書房発売日: 2008/08/…

上皮間葉転換とがん幹細胞

上の子は1年半くらい前から編み物教室に行っている。夏くらいからコンクールに出すんだといって、変わった靴下を編んでいた。いろいろな飾りがついていて、それぞれことわざを表している(「猫に小判」とか)のが本人苦心のアイデアらしい。それが昨日知ら…

山中ファクター

毎日暑い日が続いて少しばて気味。家内が栄養ドリンクを買いこんできた。今日は研究室のシミュレーション勉強会で1時間しゃべり倒したら結構ばてた。こんなことでは、10月の3時間の集中講義が思いやられる。うまくペース配分をしておかないと、話がいい…

迷惑な進化

先週の造影検査の結果を近くの病院に聞きに行く。どうも右側の尿管の出口近くが何らかの原因で詰まっていらのは確からしい。今は全く痛みはないし、今日の尿には血液は検出されなかったということで、結局、結石があって出てしまったんでしょう、というのが…

発癌メカニズム revisited

一週間後に講義の予定が入っている。癌遺伝子によるシグナル伝達をイメージングで捉える技法を説明する医・工連携の講義である。前振りに癌についての概論をしたいのでいろいろ資料を集めていると、立花隆がイチオシのブルーバックスがあるというので、早速…

ドーキンスが語るグールド

リチャード・ドーキンスの初めてのエッセイ集「悪魔に仕える牧師」悪魔に仕える牧師作者: リチャード・ドーキンス,垂水雄二出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2004/04/23メディア: 単行本購入: 4人 クリック: 51回この商品を含むブログ (57件) を見る私はあ…