エヌ氏の成長・円錐

小胞輸送研究をはじめて18年めの分子神経科学者の日々雑感

2010-01-01から1年間の記事一覧

自閉症の現象学

午前中は研究室。来年度のラボメンバーの構成を考える。 村上靖彦の「自閉症の現象学」を読む。自閉症の現象学 自閉症児は、さまざまな感覚・知覚の統合能力が弱いことにより、定型発達者のような奥行きのある(あるいはたやすく情動などと結合できる)世界…

未知なる心

朝方の北斗七星が異常に鮮やかである。 ジョン・ホーガンの「続科学の終焉 未知なる心」を読む。続・科学の終焉(おわり)―未知なる心 (Naturaーeye science)作者: ジョンホーガン,筒井康隆,John Horgan,竹内薫出版社/メーカー: 徳間書店発売日: 2000/04メディ…

数学-物理学-生物学

1) 数学が恒真文によって定義づけられるのであれば、数学の全内容は「AはAである」の一文に帰するのか?直観的にはそうでないと感じられるが、その根拠は何か? 解答の手がかり:「数学―その形式と機能」S.マックレーン ・数学は形式的なネットワークである…

惑星の思考

神楽坂で開かれた恩師の喜寿の会。毘沙門天をはじめて見た。 宮内勝典の「惑星の思考」を読む。惑星の思考―“9・11”以後を生きる作者: 宮内勝典出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2007/09/05メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 2回この商品を含むブログ (7…

食える数学、食えない○○

金曜日に筑波山にラボ遠足にでかけた。ケーブルカーの出発点は宮脇駅。そこまでの道には出世稲荷。よく晴れた秋の日で、よいラボ遠足だった。 神永正博の「食える数学」を読む。食える数学作者: 神永正博出版社/メーカー: ディスカヴァー・トゥエンティワン…

経済成長神話の終わりは日本国の終わりかもしれないが、日本の終わりではない

昨夜は、人形町にでかけて、友達と地鶏を食べる。親子丼が普通においしい。品の良いぐい呑みをもらう。 平川克美の「移行期的混乱」を読む。移行期的混乱―経済成長神話の終わり作者: 平川克美出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2010/09/09メディア: 単行本購…

研究コミュニティにおける中国人のpresenceについて

私の研究上のアイドルは、神経科学ではMoo Ming PooとG. Buzakiと(陳腐だが)Cajalなので、中国の方々の能力を高く評価している。また、文学の中で最も愛好するもののひとつは漢詩で、中でも杜甫と屈原には常に共感を覚えてきた。 最近、米国でラボを持って…

ノーバディノーズ

キャンパスでイメージング同好会を作ることが本決まりになり、ここ数日毎日のように20本近い、どれも長文のメールを書いているので、あちこちが痛い。日本語でいいのがせめてもの救いだが、継続して事務仕事をできる時間の限界がわかった。 堂場瞬一の「ノー…

宇宙をプログラムする宇宙

H先生への手土産に惣誉を取り寄せることにするセス・ロイドの「宇宙をプログラムする宇宙」を読む。宇宙をプログラムする宇宙―いかにして「計算する宇宙」は複雑な世界を創ったか?作者: セス・ロイド,水谷淳出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2007/11/10メデ…

不均衡進化論

M研のGTP loading assayのプロトコールを熟読したのだが、どうも細部に自信がもてず、白金のK大まで教わりに行くことにした。「絵解きシグナル伝達入門」で有名なH先生とゆっくりお話しするのはほぼ10年ぶり。歳月の流れの速さにびっくりする。 古澤満の「不…

分子進化のほぼ中立説

来年度の大学院講義名が「イメージング基礎」と決まった。ところが教科書指定するはずの"Fundamentals of Light Microscopy and Electronic Imaging 2ND Edition"がようやく先月出たばかりでいつ手に入るのかわからない。ちょっと不安。 太田朋子の「分子進…

数理リテラシーの精神

ラボの立ち上げで4月、5月の論文がチェックできていなかったので、まとめてチェックしたら、この時期にCell, Natureにphagosome maturetionにおけるRab5 to Rab7 coversionについて3本の決定的な論文が出ていることがわかった。読んでいるうちに、もうひとつ…

マイルズ・デイヴィス

昼食を食べてくつろいでいたら、28年ぶりに高校時代の友人から電話が入り、いろいろ話す。 村上春樹の「夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです」を読む。夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです作者: 村上春樹出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2010/09/29メ…

明日をどこまで計算できるか?

昨日、有楽町まで出かけたら、駅前のビルにクリスピー・ドーナツの店があったので、会議の後に寄り道して12個入りを買ってきた。チョコ好きの長男は大喜び。 デイビィッド・ボレルの「明日をどこまで計算できるか?」を読む。明日をどこまで計算できるか?――…

エントロピーの勉強

先週の後半はバイオイメージング学会に行ってきた。特に印象深かったのは慶応大のK先生の話。多光子励起顕微鏡で使われるフェムト秒レーザは実は広帯域なので、遺伝的アルゴリズムで適応制御することで、色の違う蛍光蛋白質をたたき分けたり、褪色を2倍程度…

時間の矢、生命の矢

夕べは、近くで花火大会。どーんどーんという音が聞こえてきたらやはりむずむずしてきて、家内と自転車で音源の方へ向かう。途中の歩道橋に人が並んで見物していたので、それに加わることにする。たぶん5年ぶりくらいの花火だった。 ピーター・コヴニー&ロ…

神経科学には新しいモデルが必要なのか

この季節、小学生の長男は扇風機がないと眠れない。お父さんはクーラー派。ということで、当分は毎晩のように調整や小細工が必要になる。 Brain Science Podcastでたまたま紹介を聞いていた"Memory and Computational Brain"がなかなか面白そうなので早速に…

ひとりでは生きられないのも芸のうち

新米教授の研究室にも3人の卒研生が入ってきて、模索しながら立ち上げ中。例えば、最近の宿題のひとつは「なんで毎日研究室に9時にこなければいかないのか」をどう納得してもらおうか、ということだ。たまたま読んでいた内田樹の「ひとりでは生きられないの…

基礎科学の手つかずの大地について

昨日の荒天とは打って変わって、いかにも春という軽快な光の楽しめる一日。こういう日には何をしていてもどこか楽しい。 大野克嗣の「非線形な世界」を読む。非線形な世界作者: 大野克嗣出版社/メーカー: 東京大学出版会発売日: 2009/06/27メディア: 単行本…

ブラックホール戦争

上の階のN教授の最終講義が行われ、200名は入るホールがほぼいっぱいになった。1時間半の予定が2時間を大きく超えるダイハードですばらしく高度な講義となり、おなかいっぱいになった。 レオナルド・サスキンドの「ブラックホール戦争」を読む。ブラッ…