エヌ氏の成長・円錐

小胞輸送研究をはじめて18年めの分子神経科学者の日々雑感

2018-01-01から1年間の記事一覧

来るべきもの

なかなか晴れ間が見えてこないまま、そろそろお昼になる。 ロビン・ハンソンの「全脳エミュレーションの時代」を読む。 全脳エミュレーションの時代 作者: ロビン・ハンソン,小坂恵理 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る 人工知能は長らく理系の…

透明な器の中の炎

雨だれの落ちてきそうな土曜日、代々木に出かけてN響のプログラムCを聴く。アシュケナージの指揮で、庄司紗耶香とオラフソンのヴァイオリンとピアノのための協奏曲ニ短調(メンデルスゾーン)。 Classicを好んで聴くようになったのはG. Gouldのゴルドベルク…

音楽・絵画・意識

音楽についても変分法的見方をすれば、絵画のように一望してその構造を眺め渡すことができるだろう。 これは、野矢先生の『眺望論』とどういう関係に立つだろうか。直接的は関わらないはずなのだが、意識の構造が変分法的なもの(無時間的なもの)とそうでな…

記述できないことは、本当は問題ではない。記述できなくてもそれは存在している

今日、池の端にあるベンチに近寄って朝の緩やかな日差しを背中に受けるように座って、100メートルほど先にいる水鳥を見ていた。 「記述できないことは、本当は問題ではない。記述できなくてもそれは存在している」と思った。極端な簡略化を施すと、ヴィトゲ…

計算機の哲学 computer-enhanced phylosophy

1)正確な表現ではないが客観的存在と主観的存在にわけるとすると、まず主観は現象学的経験からわかるとおり、「夢か現かわからない」がゆえに純粋な意味での(あるいは厳密な意味での)因果は存在しないという主張が可能である。また客観も、それが存在で…

無限に深い闇の間を補う方法論

朝、すぐそこの公園に行く。まだほとんど車も通らない時刻だ。夜が明けて30分。緑の濃さを一際増した葉桜の向こうにひどく薄い青の空が広がる。ゆるやかな風に吹かれる。 伊庭幸人先生が編集した「ベイズモデリングの世界」を読み始めた。 ベイズモデリング…

「踊れわれわれの夜を、そして世界に朝を迎えよ」

朝、池の周りの木々と青空を見上げると風が流れるような気がする。働き始めたばかりの上の子に送る写真を撮る。 佐々木 中の「踊れわれわれの夜を、そして世界に朝を迎えよ」を読む。 踊れわれわれの夜を、そして世界に朝を迎えよ 作者: 佐々木中 出版社/メ…

認知神経科学の枠組みで、意識における不確定性原理の相当物は発見できるだろうか

tnakamr.hatenablog.com 以下は、リー・スモーリンの「迷走する物理学」の一節。 「最近は、量子重力の研究をしている者はたいていが、因果性こそが根本だと−したがって、空間の概念が消えた水準でも意味をなすと−信じている。量子重力への取り組みで、これ…

あてにならない予想 -「心」の装置とその理論、および非線型性への見通し

情報理論は、クロード・シャノン@ベル研が空からつかみ出した。フロイトのアイデアは面白くもあり受け入れがたくもあるが、情報理論の視点から見ると、フロイトの唯一の誤りは、われわれの「心」の装置をエネルギー制御のシステムと考えたことにあるのだろ…

小説 複素関数論・超解像顕微鏡・摂動論

複素関数論を使うことで波動関数からeventsの確率を計算することができる。「猫は生きているのか死んでいるのか」の確率がわかる。Welcome to the real world. そこで物理学者の卵は一所懸命に複素関数論を勉強する。ストークスの定理と留数定理。 ➡波動関数…

社会システム

今日書かれるブログの8割は、東北大震災から7年がたったことについてどこかに書いてあるだろう。私の場合、2011.3.11は、たまたま学生室で打ち合わせをしていたので難を逃れたが、居室にあった天井まであるスチールの本棚が私の机に倒れていて、部屋に戻っ…

メモリは演算機能をもたない。しかし

森博嗣の最近の作品のパロディ風に(Ⅱ) メモリは演算機能をもたない。しかし量子メモリというものを仮想するとそれは量子演算ができるのではないか。量子重ねあわせを使うことで相関から因果性を抽出または推定することができるのではないか。もし相関から…

モデル構築についてのアイデア

森博嗣の最近の作品のパロディ風に モデル構築とは、無数のモデルを逐次想定し把握し、それぞれの結果までの経路をトレースして、その結果を比較することで選ぶというプロセスをさす場合があるようだ。そこではデジタル的飛躍につづくアナログ的な(と見せか…

村上春樹の3冊

よく晴れた一日で風も穏やか。今夜も大きな月が楽しめそう。 個人的には2017年の小説No. 1は村上春樹の「騎士団長殺し」だった。こういう内容の作品なのに読んでいる間に整った気持ちになるというのはずいぶん珍しい。いい絵と同じだと思うが、読んでいると…