エヌ氏の成長・円錐

小胞輸送研究をはじめて18年めの分子神経科学者の日々雑感

冬至草

京大医学部で行われた「脳のセミナー」に初めて出てみる。今日の演者は東北大のM先生。題目は「問題解決の視点からの前頭葉機能」。3時間にわたっての、途中質問ありで徹底的に突っ込んでの講演である。問題から解答への前頭前野での状態転移において、ある種の同調ととれる現象が起きているという内容。電気生理学でそこまで実験可能ということがまず驚きだった。こういう経験をすると、大脳生理学の独特の組み立てについて何となく勘が働くようになるものだ。

石黒達昌の「冬至草」を読む。

冬至草 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)

冬至草 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)

外科医として臨床も基礎研究もこなしているといういわばスーパーマンの書いたSF的純文学。全て医学・生物学に題材をとり、実に独特な世界を作り上げている。6つの中短編のうち、表題作である「冬至草」が特に記憶に残った。ウランを含んだ土壌に生息して人間の血液を養分とする「架空の」新種植物の研究者の記録。瀬名秀明が純文学の短編を書いたとしたら、あるいはこういう作品になるのかも知れない。