エヌ氏の成長・円錐

小胞輸送研究をはじめて18年めの分子神経科学者の日々雑感

思想・哲学

不確実性の不快に耐える

昨日の研究科講演会の帰りに大学の建物の脇を自転車で過ぎると、虫の音が聞こえる。暑い暑いと思ってもいつのまにか秋が来るのはいつもと同じ。 ロバート・バートンの「確信する脳」を読む。確信する脳---「知っている」とはどういうことか作者: ロバート・…

責任という虚構

8日間の夏休みの3日目。昨日はずっと自宅で読書。 小坂井敏晶の「責任という虚構」を読む。責任という虚構作者: 小坂井敏晶出版社/メーカー: 東京大学出版会発売日: 2008/08/01メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 234回この商品を含むブログ (32件) を見…

数学する遺伝子

欧米の報道では福島原発はmeltdownしたという伝えられ方をしていたが、今日の午後のニュースは東電もそれを認めたという意味なのだろうか。学術会議の物理学部会からのお知らせなども来ているが、歯がゆい話だと思う。 キース・デブリンの「数学する遺伝子」…

はじめての宗教論

震災で被害を受けて今もつらい思いをしている全ての人達にお見舞いの気持ちを伝えたい。今回の震災の報道に長時間接していると強い無常観を感じて普通の生活を送るのがつらい気持ちがしていたが、そろそろ何とかしたい。折から、前の研究室で指導していた学…

人間はガジェツトではない

先週は仙台と和光に出張。仙台は雪が舞っていた。 ジャロン・ラニアーの「人間はガジェツトではない」を読む。人間はガジェットではない (ハヤカワ新書juice)作者: ジャロンラニアー,井口耕二出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2010/12/16メディア: 新書購入…

「陽の当たる場所」への権利請求を自主的に撤回すること

Desernoから8月でOKとの返事が来て、日程のやりくりが楽になりほっとする。 内田樹の「レヴィナスと愛の現象学」を読む。レヴィナスと愛の現象学作者: 内田樹出版社/メーカー: せりか書房発売日: 2001/12メディア: 単行本 クリック: 12回この商品を含むブロ…

ひとつの学問が消滅しつつある

Gipiとやりとり。RNAi screeningの威力を感じる。 渡辺哲夫の「二十世紀精神病理学史序説」を読む。二十世紀精神病理学史序説作者: 渡辺哲夫出版社/メーカー: 西田書店発売日: 2006/07メディア: 単行本この商品を含むブログ (1件) を見る これだけメンタルク…

自閉症の現象学

午前中は研究室。来年度のラボメンバーの構成を考える。 村上靖彦の「自閉症の現象学」を読む。自閉症の現象学 自閉症児は、さまざまな感覚・知覚の統合能力が弱いことにより、定型発達者のような奥行きのある(あるいはたやすく情動などと結合できる)世界…

未知なる心

朝方の北斗七星が異常に鮮やかである。 ジョン・ホーガンの「続科学の終焉 未知なる心」を読む。続・科学の終焉(おわり)―未知なる心 (Naturaーeye science)作者: ジョンホーガン,筒井康隆,John Horgan,竹内薫出版社/メーカー: 徳間書店発売日: 2000/04メディ…

惑星の思考

神楽坂で開かれた恩師の喜寿の会。毘沙門天をはじめて見た。 宮内勝典の「惑星の思考」を読む。惑星の思考―“9・11”以後を生きる作者: 宮内勝典出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2007/09/05メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 2回この商品を含むブログ (7…

世界のジェネレーターは見えない

朝、バスを待っていると、北大路の街路樹が8割がた葉を落とし、道の向こうにある和菓子屋さんが小豆を炊いている煙が見えるようになった。来た冬を感じる、同時に暖かくもある光景だ。 ナシーム・ニコラス・タレブの「ブラック・スワン」を読む。ブラック・…

知の巨人と知の怪物

愛読している「レジデント初期研修用資料」の「努力は報われないほうがいい」の記事を読んで考え込んでいる。 http://medt00lz.s59.xrea.com/wp/archives/558 「頑張った人が、「頑張り」に見合った承認を求めると、世代を重ねるごとに、「頑張り」のコスト…

メタ宗教としての仏教

ほぼ1ヶ月ぶりに卓球に行く。休み休み1時間半やっていると汗が吹き出してくる。爽快。 河合隼雄X中沢新一の「仏教が好き!」を読む。仏教が好き!作者: 河合隼雄,中沢新一出版社/メーカー: 朝日新聞社発売日: 2003/08/06メディア: 単行本購入: 1人 クリック…

revisited

木曜日に聞いたMoo Ming Pooのレクチャーがずっと頭の中で残響を繰り返している。Moo Ming Pooは部地理畑出身の神経科学者で、「セカンドメッセンジャーのレベル変化による成長円錐ガイダンスの反転」「spike-timing dependent plasticity」など多くの追随者…

甦る怪物

研究は不思議なもので、進み方にかなりの波がある。1年か2年に1回くらい、何をやってもうまくいく、あるいは何を考えても上手く当たる(という気がする)ときがある。そのときにどれくらい根を詰められるかが、いい仕事をする大事な鍵だと思っているので…

直木賞受賞おめでとう

まずは「空飛ぶ馬」以来の熱心なファンとして、北村薫さんの直木賞受賞におめでとうを言いたい。 報道を見ると、「空飛ぶ馬」は89年の作なので、ちょうど20年が経つことになる。特に「円紫さん」シリーズがお気に入りで、個人的ベスト3は、「空飛ぶ馬」…

カドヘリンと強烈な努力

昨日は研究科の若手の会の飲み会で、出町商店街のSに行った。結構しっかり飲んで4千円とリーズナブル。飲み会の8割は、W研で鳥の歌の学習の研究をしているAさんとひたすら「神経科学を根本的に変えるにはどうしたらいいか」を語り尽くした。AさんはCDBのセ…

否定と流動

最近、イギリスのSさんとメールのやりとりをしている。お互い論文で名前を知っていただけの仲なので、最初は「こんなこと書いてもいいのかなぁ」という感じだったが、お互いの興味がほとんど一致している(幸い手法が異なる)ことがだんだんわかってきて、打…

独我論

すでに入梅したのではという感じの一日。子供が学校で聞いたきた話では、疎水で蛍が飛び始めたらしい。鬼界彰夫の「ウィトゲンシュタインはこう考えた」を読む。ウィトゲンシュタインはこう考えた-哲学的思考の全軌跡1912~1951 (講談社現代新書)作者: 鬼界彰…

チベットのモーツァルト

先月買ったデルのDVDドライブを壊してしまった(壊れてしまった)ので、電話で引き取り修理を依頼。コールセンターの女性は名前からして韓国か中国の人らしい。流暢な日本語なのだが、ところどころ何を言っているのかわからない。でもそんなことを気にしては…

研究者になるために、人間になるために

うちの大学では、この3月から国際共同人材育成機構という若手研究者の育成プログラムが走っている。20台後半−30台前半の若手研究者10名に、場所と研究費500万円を与えて自由にやってもらおうというプログラムだ。前回のプログラムでは、5年の任期後…

17−20世紀の観念史

昨日ビデオがおシャカになってしまったので、BDレコーダーを買うことにして(地デジ対応もそろそろしなければならないし)、朝からネットで調べもの。価格ドットコムやら何やらを巡った揚げ句、Panasonicの実売5.6万円の機種(2番組録画は不可)に決めた…

これは魂かって?

学術振興会の奨学生応募の季節が来た。250万円x3年なので学生さんにも気合が入る。連休中にできあがった第一案を学生さんが持ってきたので、午前中いっぱいを使って推敲した。資料を見ると、昨年のDC1の採択率は何と28%強もある。こんなところにお金を使っ…

過去中心主義の時間論

活動的な連休を送っている。土曜日はH師匠の話を聞きに出かけた。日曜日は松本幸四郎・松たか子の「ラ・マンチャの男」を見てきた。たまたま最前列の真ん中という極上の席だったので、すごい迫力だった。手を伸ばせば届きそうなところで演劇を見たのは初めて…

本物のchemistというものを見た

今日は、はじめて本物のchemistというものを見た。化学は暗記物と軽く思っていたが、いやいやどうして本物はすごい。研究科に東大薬学部の浦野さんが来て、「合理的な蛍光小分子の設計とin vivo imaging」という題でセミナーをした。蛍光小分子は、昨年度の…

こんな日本でよかったね

昨日は研究室の新人歓迎会。幹事が硬骨男性に変わったので、「すき焼き食べ放題」というガッツリ系の宴会になった。飲み放題もついて4200円なのは宴会専用店だからだろう。若い人はよく食べる。こちらはバランスよく適当につまんでいたつもりだったが、場の…

科学の世界と心の哲学

昨晩は10年ぶりに鳥取大学のO先生に会って、北白川の小料理屋で4時間くらい四方山話で過ごした。酒はビールと秋田の太平山。久しぶりに適量以上を飲んで、午前中は軽い二日酔い。小林道夫の「科学の世界と心の哲学」を読む。科学の世界と心の哲学―心は科…

「無」のリアリティ

昨年の秋、井筒俊彦の「意識と本質」を読んで、禅の哲学的意味を少しかじれた気がした。 http://d.hatena.ne.jp/tnakamr/20080923/1222146172そうすると、次には「実際にやってみるとどうだろう」と考えるようになり、手軽に座禅ができるとことがないかと探…

松岡正剛の「多読術」

私は、自分の人生の目的(の少なくともひとつ)は、「読書家になること」だと思っている。なので、希代の読書家が読書法を語る本にはいつも興味津々である。新聞で松岡正剛の「多読術」の広告を見つけたので、早速生協書店に行って買ってきた。多読術 (ちく…

流動的知性である無意識は通時的である

今週は、半ばにU財団の研究助成金の贈呈式で東京まで日帰りした。体調不十分だったので、ドタキャンしようかと一瞬思ったが、我慢してでかけてよかった。出席率は95%以上だったし、U賞を受けた山中伸弥先生味のある話も聞けた。同時受賞はT大の飯野先生。…