エヌ氏の成長・円錐

小胞輸送研究をはじめて18年めの分子神経科学者の日々雑感

脳・神経

ひとつの学問が消滅しつつある

Gipiとやりとり。RNAi screeningの威力を感じる。 渡辺哲夫の「二十世紀精神病理学史序説」を読む。二十世紀精神病理学史序説作者: 渡辺哲夫出版社/メーカー: 西田書店発売日: 2006/07メディア: 単行本この商品を含むブログ (1件) を見る これだけメンタルク…

自閉症の現象学

午前中は研究室。来年度のラボメンバーの構成を考える。 村上靖彦の「自閉症の現象学」を読む。自閉症の現象学 自閉症児は、さまざまな感覚・知覚の統合能力が弱いことにより、定型発達者のような奥行きのある(あるいはたやすく情動などと結合できる)世界…

未知なる心

朝方の北斗七星が異常に鮮やかである。 ジョン・ホーガンの「続科学の終焉 未知なる心」を読む。続・科学の終焉(おわり)―未知なる心 (Naturaーeye science)作者: ジョンホーガン,筒井康隆,John Horgan,竹内薫出版社/メーカー: 徳間書店発売日: 2000/04メディ…

神経科学には新しいモデルが必要なのか

この季節、小学生の長男は扇風機がないと眠れない。お父さんはクーラー派。ということで、当分は毎晩のように調整や小細工が必要になる。 Brain Science Podcastでたまたま紹介を聞いていた"Memory and Computational Brain"がなかなか面白そうなので早速に…

神経発生学の哲学

Society for Neuroscienceは3万人以上の参加者を集めて5日間開かれる。今は4日目の朝。時差ぼけもとれていろいろ楽になったところだ。まずはとにかくlectureのレベルが高いので、聞いているだけで脳が揺さぶられてくる。おまけに長丁場なので、お昼過ぎな…

Rhythms of the Brain

今週の後半はすっかり秋の空気に入れかわって、雲も高くちぎれて流れるようになった。いい季節なのだが、研究者にとっては科研費の申請書の季節でもあり、今年は特に大幅にルールが変わったこともあって、いろいろ調整に時間がかかっている。シルバーウィー…

あぶないsocial cognitive neuroscience

あさってのB教授へのプレゼンに向けてpowerpoint作りを進めた。何しろRap1の第一人者なので、どこから爆撃されるかわからない。基本は守備的に行きつつ、要所で踏ん張りたい。 藤井直敬の「つながる脳」を読んだ。つながる脳作者: 藤井直敬出版社/メーカー: …

周辺に核心がある

今、とても知りたいことがある。学生さんとある蛋白質のリン酸化を調べているのだが、どうもリン酸化と機能の間に非常に奇妙な関係がありそうな気がしてきている。残念なことにその領域の立体構造はまだ決められていないので、そのメカニズムが具体的に想像…

カドヘリンと強烈な努力

昨日は研究科の若手の会の飲み会で、出町商店街のSに行った。結構しっかり飲んで4千円とリーズナブル。飲み会の8割は、W研で鳥の歌の学習の研究をしているAさんとひたすら「神経科学を根本的に変えるにはどうしたらいいか」を語り尽くした。AさんはCDBのセ…

よみがえる網状説

昨日は米沢富美子先生の講演を聴きに行った。進化論と20世紀物理学と複雑系の話。一般向けの講演で「おー」というネタはなかったが、話し方の参考になった。ただスライドが妙にピンクが多かったり、ピンクや水色の☆マークが頻出するのには参った。最後に挨…

ミラーニューロンの発見

M2の学生さんにやってもらっている仕事が面白いところに来ている。ただ自分はその方面の本当の専門家ではないので、directional adviceをもらうために、学生さんと精神・神経センターまで出かけてHさんとじっくり相談してきた。自分たちでも意外なことに、H…

カオスと禅

3ヶ月前から日曜日に市のスポーツセンターで卓球をしている。1時間もやっていると汗が吹き出てきて爽快である。これまではセンターでラケットを借りていたのだが、だんだん面白くなってきたので、インターネットでラケットを購入。Nittakuの「佳純ベーシッ…

minimal NCC

再来週、神戸大で英語の講義を頼まれていて、そのための英語のブラッシュアップにBrian Science PodcastのChristof Kockの回を繰り返し聞いている。そのうちにふとNCC(Neurocal Correlate of Consciousness)を構成可能な最小ニューロン数はどれくらいだろう…

単純な脳、複雑な「私」

昨日は、北海道大学のS先生が来て、JCウイルスの話をしていった。教授の弟弟子で、電話をよく取り次いだりしているので、勝手に親近感を覚えていたが、会うのははじめて。実に味わいのあるいい人だった。話が結構ややこしかったので、途中でいろいろつっこみ…

One-day experiment, One-year analysis

今日は医学部でRutgers大学の坂田秀三さんのセミナー。タイトルは「聴覚野における神経集団活動の層構造」。坂田さんはSwingy Brainのブログで有名。最新の電気生理実験を勉強がてら、顔を見に行く。電気生理の素人には、シリコンファイバーでの多点同時記録…

これは魂かって?

学術振興会の奨学生応募の季節が来た。250万円x3年なので学生さんにも気合が入る。連休中にできあがった第一案を学生さんが持ってきたので、午前中いっぱいを使って推敲した。資料を見ると、昨年のDC1の採択率は何と28%強もある。こんなところにお金を使っ…

心は遺伝子の論理で決まるのか

勤務先の大学院には副指導教員という制度があり、いわゆる指導教員のほかに2人の教員が研究や生活面などの相談にのることになっている。今年は博士1年の学生さんの副指導にあたることになり、今日早速1時間ほど話をした。その学生さんは神経回路の研究を…

意識の存在理由

ここしばらくM2の学生さんと彼の進路について相談している。彼はもともと意識とか自己といったものに興味があって神経科学を志したのだが、学部4年の時の卒業研究でそちら寄りのラボに行き、何だか違う(あるいは、これでは食っていけそうにない)と思って…

Nature via Nurture

朝、不意に思い立って、嫁さんと龍安寺に桜を見にでかけた。あの石庭に前方からかぶさるようにして枝垂桜が咲いている写真を見たとき、「次は桜の季節に来よう」と思ったのを思い出したからだ。枝垂桜は満開で、石庭にはなやかな蔭を落としている。少しばか…

プルーストとイカ

センター試験の頃は決まって寒くなるという記憶があるが、今日は朝から陽も差して穏やかだ。明日は試験監督で一日大学にいなければならないので、のんびり過ごすことにする。メアリアン・ウルフの「プルーストとイカ」を読む。プルーストとイカ―読書は脳をど…

くらやみの速さはどれくらい

2004年のネビュラ賞受賞のSF「くらやみの速さはどれくらい」(エリザベス・ムーン)を読んだ。くらやみの速さはどれくらい (ハヤカワ文庫 SF ム 3-4)作者: エリザベス・ムーン,小尾芙佐出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2008/12/10メディア: 文庫購入: 3人 …

「二分心」理論と精神分析

今週は山あり谷ありで、何とか無事に週末にたどりつけたという感じだ。研究室では、年に二度、メンバー一人一人が教授と面談して、将来構想から人間関係の悩みまでひととおり話すというシステムがある。いい仕組みだと思う。それなりに相談したいことをまと…

時間と存在

連休最終日。朝から大森荘蔵の「時間と存在」を読む。時間と存在作者: 大森荘蔵出版社/メーカー: 青土社発売日: 1994/03/01メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 1回この商品を含むブログ (9件) を見る「時は流れず」に接続する大森本。第一章は時間論。第二…

時は流れず

日曜の朝というのに、Brain Science PodcastでBuszakiの「脳のリズム」のインタビューを聞いて活性化されてしまった。大森荘蔵の「時は流れず」を読む。時は流れず作者: 大森荘蔵出版社/メーカー: 青土社発売日: 1996/08/01メディア: 単行本購入: 2人 クリッ…

ゆらぐ脳

月・火・水と神戸ポートピアホテルでゲノム特定研究の班会議にでかけた。発表5分、討論2分の顔見世興行なのだが、発表時間が短いほどうまい下手はよくわかる。3日で200人ほどは聞いたろうが、特に驚く話はなかった。発表会場外でのおしゃべりの方が楽…

脳のデザイン

庭の朝顔が薄紅色と水色の花をつけている。今年も良く咲いた。篠本滋の「脳のデザイン」を読む。脳のデザイン作者: 篠本滋出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1996/03/15メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 1回この商品を含むブログ (2件) を見る篠本滋は京…

脳は物理学をいかに創るのか

ようやく内閣改造が決まりそうな雲行きになってきた。福田内閣のフットワークの悪さにはいらいらを感じていたので、何にせよ物事が前に進むのは歓迎である。公明党も年内解散を言い出しているので、いよいよ福田さんも腹のくくり時と思っているのかもしれな…

甘利先生の本質

今日は嬉しいニュースがあった。修士、博士と5年間一緒に仕事をしたA君が8月1日付けで同じ研究室の助教になることが教授会で決まった。これで本人も腰を落ち着けて今の仕事に全力投球できるようになるだろう。若い人がどんどん上がってくるので、こちらも…

ペンローズの<量子脳>理論

昨日の学会でのトークは割りと反応がよく、気分良く晩御飯に出かける。渋谷のハチ公前で年下の友人と待ち合わせて(ハチ公の角度が以前と90度違うような気がするのだが、単なる記憶違いか)、パルコの近くのせいろ蒸し屋に入る。豚肉のせいろ蒸しを白ワイ…

皇帝の新しい心

私が勤務している研究科には副指導教員制度というものがある。いわゆる指導教官とは別に、2人の教員が面談して学生さんの状況を確認し、情報を共有する。まあ不調の早期発見のためのカウンセリングだと思っている。今日は博士1年の学生さんの面談を1時間…