私が勤務している研究科には副指導教員制度というものがある。いわゆる指導教官とは別に、2人の教員が面談して学生さんの状況を確認し、情報を共有する。まあ不調の早期発見のためのカウンセリングだと思っている。
今日は博士1年の学生さんの面談を1時間ちょっとやった。オーバードクターの問題が大学院生の心にも重くのしかかっているのを感じた。これはちょっとやそっとではどうにもならない問題だ。あてにならない(してはいけない)企業の求人を当てにして、バイオ系の大学院生をむやみと増やした政策的失敗だと思う。かといって、国力を維持するために研究開発の人材の層を厚くするという原則そのものは正しいようにも思うし、この問題は本当に難しい。
今日は6月30日。京都では「夏越の祓」という風習があるそうで、「水無月」という和菓子を食べるらしい。家内が近くの鳴海屋で買ってきてみんなで食べる。1個150円。これで夏ばてせずにすめば安いものだが。
宿題だったペンローズの「皇帝の新しい心」を読む。
- 作者: ロジャーペンローズ,Roger Penrose,林一
- 出版社/メーカー: みすず書房
- 発売日: 1994/12/20
- メディア: 単行本
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本論の意識の問題がはじまるまでに400ページの前振りがあるのには少しくたびれたが、なるほど議論を呼んだだけのことはあると思った。ただ、先に「心の影」を読んでいたので、衝撃力は薄まってしまった。
「ユニタリー手順に従う通常の線型重ね合わせの規則は重力子に適用する時には修正を施され、ある種の時間非対称的な「非線型不安定性」が入り込むというのが私の考えである。
私は、脳の無意識の活動はアルゴリズム的過程に従って遂行されるのに対し、意識の活動は全く異なっていて、いかなるアルゴリズムによっても記述できない仕方で進行すると唱えたい」
「意識が非アルゴリズム的な仕方で真理判断に影響を及ぼせると信じる理由の大きな部分はゲーデルの定理を考察する事から得られる。もし、計算と厳密な証明が重要な因子を形作っている数学的判断を形成する際の意識の役割が、非アルゴリズム的なものであることが分かれば、もっと一般的な状況における意識の役割についても、このような非アルゴリズム的要素が決定的なものであることが信じられるようになるだろう」
「「正しい量子重力」論が実際に発見されるならば、その後でそれを用いて意識の現象を解明する事が可能になると私は予想する。さらに言えば、もし「正しい量子重力」論が手に入れば、それが備えているはずの性質は、上で言及した難解な2粒子EPR現象以上に、従来の時空記述からかけ離れたものとなるだろうと私は信じている。もし私が示唆しているように、意識の現象がこの話題の「正しい量子重力」論に依存しているのだとすると、意識自体が目下われわれがもっている慣習的な時空記述にさっぱり適合しないのは当然だろう」
意識が非アルゴリズム的なものだというのは十分納得できたが、だから新しい量子重力理論によって意識の現象を解明する事が可能になる、というところでギャップを感じた。これはペンローズの単なる期待(あるいは直観)なのだろうか。
結局は、最新刊の「The Road to Reality」を読まないと腑に落ちないのだろうか。早く日本語版がでないかな。原書はちょっとした枕くらいの厚さの本なので、かなり気合をいれないと途中で沈没するのは目に見えている。悩むところである。