エントロピーの勉強
先週の後半はバイオイメージング学会に行ってきた。特に印象深かったのは慶応大のK先生の話。多光子励起顕微鏡で使われるフェムト秒レーザは実は広帯域なので、遺伝的アルゴリズムで適応制御することで、色の違う蛍光蛋白質をたたき分けたり、褪色を2倍程度抑えることができるらしい。FRETプローブの多光子励起イメージングにとっての最大の障壁は「褪色」なので、実用上の意味はかなり大きいと思われる。この手の話に日本でアンテナを立てておくにはどの学会に出入りすればいいのか、懇親会でK先生を捕まえられなかったので、後でメールで質問してみるつもり。
プリゴジンとスタンジュールの「混沌からの秩序」を読む。
- 作者: I.プリゴジン,I.スタンジェール,伏見康治,伏見譲,松枝秀明
- 出版社/メーカー: みすず書房
- 発売日: 1987/07/01
- メディア: 単行本
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不可逆性あるいは時間の一方向性を理解するためには、熱・統計力学の基礎的なところを自分の頭で理解しなければならないようで、田崎先生の本などと一緒に、この手の本も読んでいる。一般力学、量子力学と熱・統計力学が上下の関係にないことがようやく飲み込めてきた。
でもたとえばこういうことを書かれると、字面はわかっても気持ちがわからない。
「エントロピーの増大(あるいはH関数の減少)は、自然法則に中に存在する時の矢に基づくものではなく、未来(過去ではない)の挙動を予測するために、現在の知識を使うことにしたわれわれの意思決定にもとづいている。」
「いったんこのような事情が分かると、第二法則の本質的な意味を表現することができる。それは、二つのタイプの解のうち一方だけが自然の中で実現できたり観察できたりするという選択原理になる。第二法則が適用できる場合はいつも、それは自然の本質的な偏りを示している。これは決して力学そのものの産物ではない」
どうもこのあたりがわからないと、そもそも平衡統計力学がわかったことにならないようなので、類書で勉強のし直し。そういえば、田崎先生の日記に、浜松医大のS先生がエントロピーを勉強に来たと書いてあったが、そのこころが知りたい。生体反応やシステムの不加逆性に関心があるのだろうか。