エヌ氏の成長・円錐

小胞輸送研究をはじめて18年めの分子神経科学者の日々雑感

光を描くときにタッチはむしろ邪魔になる

朝から有楽町に出かけて、フェルメール The Greatest Exhibitionを観る。2023年にアムステルダムで開かれた最大の展覧会の内容を記録したドキュメンタリー。非常に楽しめた。 フェルメールの名前を意識したのは35年くらい前に、友人に「北のモナリザ」(=「…

長い19世紀と神経科学の歴史

数字上の19世紀は1801年から1900年までだが、1789年のフランス革命から1914年の第1次世界大戦の始まりまでを「長い19世紀」とまとめて考えると腑に落ちるという話がある。一般的なレベルで個人が意識されるようになる端緒としてのフランス革命にはじまり、人…

COVID-19の年だった2020年も最後の日

COVID-19の年だった2020年も最後の日。東京の感染者が1300人という知らせを聞いて家内と顔を見合わせる。 2020年はTwitterを使い始めた年だった。6月に再開された講義は全てリモートになったが、立ち話もはばかられる状況だったので何をどうしたらいいかがよ…

希望という言葉が背負える力

新型コロナウイルス感染症流行のはじまりのころに、小澤征爾が指揮するサイトウ・キネンオーケストラのマタイ受難曲をたまたま聴いた。名曲という話は耳にするが自分には縁のない曲だと思っていた。でも気がついたら2時間弱の演奏を一気に聴ききっていた。こ…

あてにならない予想 -「心」の装置とその理論、および非線型性への見通し

情報理論は、クロード・シャノン@ベル研が空からつかみ出した。フロイトのアイデアは面白くもあり受け入れがたくもあるが、情報理論の視点から見ると、フロイトの唯一の誤りは、われわれの「心」を作り出している装置をエネルギー制御のシステム(あるいは…

脳は情動のインスタンスを生成する

2020年は1日、2日と穏やかな晴天。昨年末から土井コーヒーのドミニカ・リリオス農園を飲んでいる。独特の甘さと香りがある。 リサ・フェルドマン・バレットの「情動はこうしてつくられる」を読む。 情動はこうしてつくられる──脳の隠れた働きと構成主義的情…

来るべきもの

なかなか晴れ間が見えてこないまま、そろそろお昼になる。 ロビン・ハンソンの「全脳エミュレーションの時代」を読む。 全脳エミュレーションの時代 作者: ロビン・ハンソン,小坂恵理 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る 人工知能は長らく理系の…

透明な器の中の炎

雨だれの落ちてきそうな土曜日、代々木に出かけてN響のプログラムCを聴く。アシュケナージの指揮で、庄司紗耶香とオラフソンのヴァイオリンとピアノのための協奏曲ニ短調(メンデルスゾーン)。 Classicを好んで聴くようになったのはG. Gouldのゴルドベルク…

音楽・絵画・意識

音楽についても変分法的見方をすれば、絵画のように一望してその構造を眺め渡すことができるだろう。 これは、野矢先生の『眺望論』とどういう関係に立つだろうか。直接的は関わらないはずなのだが、意識の構造が変分法的なもの(無時間的なもの)とそうでな…

記述できないことは、本当は問題ではない。記述できなくてもそれは存在している

今日、池の端にあるベンチに近寄って朝の緩やかな日差しを背中に受けるように座って、100メートルほど先にいる水鳥を見ていた。 「記述できないことは、本当は問題ではない。記述できなくてもそれは存在している」と思った。極端な簡略化を施すと、ヴィトゲ…

計算機の哲学 computer-enhanced phylosophy

1)正確な表現ではないが客観的存在と主観的存在にわけるとすると、まず主観は現象学的経験からわかるとおり、「夢か現かわからない」がゆえに純粋な意味での(あるいは厳密な意味での)因果は存在しないという主張が可能である。また客観も、それが存在で…

無限に深い闇の間を補う方法論

朝、すぐそこの公園に行く。まだほとんど車も通らない時刻だ。夜が明けて30分。緑の濃さを一際増した葉桜の向こうにひどく薄い青の空が広がる。ゆるやかな風に吹かれる。 伊庭幸人先生が編集した「ベイズモデリングの世界」を読み始めた。 ベイズモデリング…

「踊れわれわれの夜を、そして世界に朝を迎えよ」

朝、池の周りの木々と青空を見上げると風が流れるような気がする。働き始めたばかりの上の子に送る写真を撮る。 佐々木 中の「踊れわれわれの夜を、そして世界に朝を迎えよ」を読む。 踊れわれわれの夜を、そして世界に朝を迎えよ 作者: 佐々木中 出版社/メ…

認知神経科学の枠組みで、意識における不確定性原理の相当物は発見できるだろうか

tnakamr.hatenablog.com 以下は、リー・スモーリンの「迷走する物理学」の一節。 「最近は、量子重力の研究をしている者はたいていが、因果性こそが根本だと−したがって、空間の概念が消えた水準でも意味をなすと−信じている。量子重力への取り組みで、これ…

あてにならない予想 -「心」の装置とその理論、および非線型性への見通し

情報理論は、クロード・シャノン@ベル研が空からつかみ出した。フロイトのアイデアは面白くもあり受け入れがたくもあるが、情報理論の視点から見ると、フロイトの唯一の誤りは、われわれの「心」の装置をエネルギー制御のシステムと考えたことにあるのだろ…

小説 複素関数論・超解像顕微鏡・摂動論

複素関数論を使うことで波動関数からeventsの確率を計算することができる。「猫は生きているのか死んでいるのか」の確率がわかる。Welcome to the real world. そこで物理学者の卵は一所懸命に複素関数論を勉強する。ストークスの定理と留数定理。 ➡波動関数…

社会システム

今日書かれるブログの8割は、東北大震災から7年がたったことについてどこかに書いてあるだろう。私の場合、2011.3.11は、たまたま学生室で打ち合わせをしていたので難を逃れたが、居室にあった天井まであるスチールの本棚が私の机に倒れていて、部屋に戻っ…

メモリは演算機能をもたない。しかし

森博嗣の最近の作品のパロディ風に(Ⅱ) メモリは演算機能をもたない。しかし量子メモリというものを仮想するとそれは量子演算ができるのではないか。量子重ねあわせを使うことで相関から因果性を抽出または推定することができるのではないか。もし相関から…

モデル構築についてのアイデア

森博嗣の最近の作品のパロディ風に モデル構築とは、無数のモデルを逐次想定し把握し、それぞれの結果までの経路をトレースして、その結果を比較することで選ぶというプロセスをさす場合があるようだ。そこではデジタル的飛躍につづくアナログ的な(と見せか…

村上春樹の3冊

よく晴れた一日で風も穏やか。今夜も大きな月が楽しめそう。 個人的には2017年の小説No. 1は村上春樹の「騎士団長殺し」だった。こういう内容の作品なのに読んでいる間に整った気持ちになるというのはずいぶん珍しい。いい絵と同じだと思うが、読んでいると…

熱力学の第二法則を量子力学から導出する―物理的な時間概念の明確化へ―意識の中で流れる時間

秋空の美しさはあの雲の形によるのだと思う。 「量子力学から熱力学第二法則を導出することに成功〜時間の矢の起源解明へ大きな一歩」 http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/a1e326855ceb0a640f75c08d2c0fb423東大大学院工学研究科の沙川先生の研究室がPhysical…

通奏低音としての核戦争

SF

暖かい正月。箱根を走る選手も今年は寒そうに見えない。散歩する道にいつの間にか水仙が咲いているし、おそらく花粉も早めに飛ぶので早めに準備をしたほうがいいだろう。 クリフォード・D・シマックの「中継ステーション」を読む。中継ステーション〔新訳版…

異端の統計学ベイズ

今日は昨日に続いて朝から良く晴れている。関東はこういう時に空の広さを感じる。 シャロン・バーチュ・マグレインの「異端の統計学ベイズ」を読む。異端の統計学 ベイズ作者: シャロン・バーチュマグレイン,Sharon Bertsch McGrayne,冨永星出版社/メーカー:…

旅の終わり

2週間あまりの旅を終えて、組長は無事に帰国。 アエロフロート機内食は意外といけるらしい。 次は大英帝国征服か?

グッバイ スペイン

スペイン最後の一日はマドリッド観光。王宮、プラド美術館、お土産の買い物を済ませて、 晩御飯をまたたらふく、そしてこれがたぶん最後のチュロス。グッバイ スペイン

意識というスポークスマンと脳という巨大組織

秋晴れ。昼ごはんは早めに歩いて蕎麦屋に行って、ミニ穴子丼もり付きを食べる。彼岸花があちこちに咲いている。 私はシステム神経科学や認知心理学の畑の人間ではなく、隣の畑を耕す人間の立場で、意識の研究に注意を払ってきた。 その中で特に強く印象に残…

スペイン旅行(14日目) 大西洋

巡礼は終点(聖ヤコブが作った教会)で終わりだが、組長は大西洋までバスで移動。大西洋だ! なぜあんなところに山羊が(by 組長) 夕食はこれ。 明日は一日、サンチャゴ・デ・コンポステーラの観光にあてて、夜行バスでマドリードまで移動する。

スペイン旅行(13日目)ゴール!

ついにサンチャゴ・デ・コンポステーラに到着。 有名な12時からのミサにも出ていたが、「やっぱりわからん」道では演奏していて、多国籍チームでまたたっぷり食べた。 名物のタコにタバスコをかけたタパスも食べた。 日本人の知り合いの伝手で高級ホテル(お…

スペイン旅行(12日目) たっぷり

モンテ・ド・ゴソまでの雨の道を歩く。石畳 早めについたのでゆっくりたくさん食べる。 明日の朝早くにサンチャゴ・デ・コンポステーラに着いて、12時からのミサに出る予定。

スペイン旅行(11日目) 足が痛い

今日のうちにサンチャゴのひとつ前の町に入っておくはずだったが、ついに足にきた。痛い痛いで、それでも何とか20キロ歩いてA Ruaまでたどり着いた。 なかなか感じのいい町とそれなりの巡礼宿(貝がついているのは巡礼宿の印) なかなかよさそうな(しっかり…