エヌ氏の成長・円錐

小胞輸送研究をはじめて18年めの分子神経科学者の日々雑感

学力低下は錯覚である

10日前に行ったイメージングの授業の学生からのコメントが、事務からメールで届いた。感想はさまざまで注文をつけているものもあるが、9割がたは好評でほっとする。1時間半の予定が1時間10分しか話せなかったので、それをどうするかが来年の課題である。単純に内容を水増しするわけにもいかないのでよく考えておく必要がある。

小飼弾氏のプログで神永正博著「学力低下は錯覚である」が紹介されていた。

学力低下は錯覚である

学力低下は錯覚である

日ごろ気にしていた内容だったので、昼休みに生協書籍部によって即購入。仕事を中断して一気に読む。

高校生の学力は低下していない。にもかかわらず、大学生の学力低下は明瞭である。理由は実は単純で、少子化で以前なら大学に入れなかった子供も大学に行くようになったからだということが、詳細なデータで実証されている。なーるほどである。

理工系離れも明瞭に説明可能である。男子の工学部進学率は昔から26%前後である。これに対し、女子の工学部進学率は5%あるかなしか。以前に比べ女子が大学に行く率が上がっているので、結果として工学部志望の絶対数は減少する。

ほっとしたのはゆとり教育が学力を低下させたというはっきりしたデータはどこにもないということだ。実際、ゆとり教育の代名詞であるフィンランドは高い学力を誇っている。

諸悪の根源は少子化だということが結果としてはっきり浮かび上がってくる。これはかなり構造的な問題なので、すぐには解決は望めない。である以上、大学生の学力低下あるいは、中程度以下の大学での定員割れを必然と受け容れて対処法を考えるしかないというのが結論だろう。著者は、問題が隠しようもなく悪化してくるのは2020年と予測している。

いろいろ考えて、自分が研究室を持つとしたら中堅大学だろうという心積もりでいる。したがって、大学生の学力低下の影響をもろに受けるだろう。さーて、どうしたらいいものか。時間はあまりないが、焦って解決する問題でもない(個人で解決できる問題でもない、対処できるかどうかだけである)。