エヌ氏の成長・円錐

小胞輸送研究をはじめて18年めの分子神経科学者の日々雑感

長射程の告発

医療ミステリーという分野がある。ときどき読む。誰かのブログで薦められて読んだのが、久坂部羊の「破裂」だ。

破裂

破裂

現役医師による挑発的な作品。医療の国家統制をめざす”厚生労働省マキャベリ"佐久間のキャラクター造詣が強烈で、医師、ジャーナリストらを巻き込んで話はどんどん展開する。

読後感は決して明るくない。一患者として診察を受けるだけの身であってみれば、医師のダークサイドなど知ってどうなる、という思いもある。だが、久坂部羊の告発の射程は長く、日本という国家の現状までが告発されている。

同じく医療ミステリーである海堂尊の作品を陽とすれば、この作品は陰である。しかし、その問題提起の深さは久坂部羊の方が上であろう。作風からしてポピュラーにはなりえないが。

午後、借りてきていたDVDを観る。岩井俊二の「花とアリス」。

花とアリス 通常版 [DVD]

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蒼井優鈴木杏。画面は淡々と進む。蒼井優も「フラガール」で見せた演技力を発揮していない。私にとっての見所は映画の終わりも近い蒼井優のバレエの場面である。理由は分からないが、蒼井優にはこころの琴線に触れるものがある。それが既にこの部分で発揮されている。一見の価値はあった。