エヌ氏の成長・円錐

小胞輸送研究をはじめて18年めの分子神経科学者の日々雑感

医師の人間力

豚インフルエンザは関西圏であれよあれよという間に広がっているようだ。現実感がないほどのスピードだ。通勤路に京都ー大阪を結ぶ京阪電鉄のターミナル駅があるのだが、今朝すれちがったサラリーマンは7割がたマスクをしていた。仕事とはいえ、この状態で大阪に通うのは神経を使いそう。

でも、小学校に行く下の子にマスクを持たせたのだが、クラスでは誰もマスクなどしていなかったらしくて、そのまま持って帰ってきた。みんなどこまでやればいいのか迷っているのだろうか。

そういえば、柳田充弘先生がブログで怖いことを書いていた。今流行っているウイルスはどうやら弱毒性なのは間違いないらしいが、秋ごろには強毒性になる可能性があるらしい(ほんと?)。それくらいならば、弱毒性のうちにかかって免疫を作っておいた方がいいのではないかという話。今でさえ、18歳以下は症状が重くなることがあるそうだから、そういう話を聞くと「うーむ」という感じ。わざわざかかる必要があるのかどうか。といってもワクチンも早くて10月という話だから、本当に強毒性になる可能性があるのならそういうのもありかなあ。ネットで調べてみても本当の専門家からの発信が少ないようで、さっぱりわからない。N先生は昔インフルエンザウイルスの仕事をやっていたけど、最新情報を知っているだろうか?

久坂部羊の「まず石を投げよ」を読む。

まず石を投げよ

まず石を投げよ

医療ミスの裏側を描いた怖い、でも考え込んでしまうミステリー。

「どうして医療ミスが起こるのか。うっかりミスであったり、医師の疲れが原因だったり、いろいろあるでしょう。でも、ほんとうはもっと深い理由があるのです。それは患者に対する医師の嫌悪です。医療ミスは、医師が患者を嫌っているときに、より高率に起こります。もちろんわざとじゃない。嫌いな患者に向き合うとき、医師は無意識に反感を抱き、集中力を低下させてしまう。深層心理がそうさせるのです。だから致命的なミスが起きるのです」

教員として医学部に2年ほど籍があった間、医師を職業人としてでなく、内部から人間として見る機会があった。人間には弱さがあるので、当然医師である人間にも弱さがある。そして医学生を見ていると、人間として少しずつ弱くなっている気がする。一学年100人弱なわけだが、メンタルに問題を抱えて出てこなくなる学生が複数いる。たぶん潜在的に問題を抱えている学生はその10倍はいそうであり、彼らはそれを何とかごまかして医師になっていく。だが、職業としての医師は実に厳しい職業であり、もともと弱さを抱えて人間が何十年もやれる仕事ではあるまい。医学は進むが、医師の人間力はたぶんだんだん低下する。

というようなことをいろいろ考えてしまう本だった。