エヌ氏の成長・円錐

小胞輸送研究をはじめて18年めの分子神経科学者の日々雑感

Iさんの来訪

このブログを書くきっかけになったT大学のIさんが京都にやってきた。最初は本当に京都で呑んで帰るだけの予定だったが、急遽内輪でセミナーをやってもらうことになる。

生命科学の研究室で計算機物理学の第一人者に何を話してもらうか考えたが、本人が一番話したい事をということで「アボガドロ数への挑戦−非平衡統計物理学」という題で話してもらった。

スーパーコンピューターがどんどん速度を上げてくると、単に早く計算できるというだけでなく、質的な変化が起きてくると言う話。特に面白かったのが、今まで流体力学や熱力学という形で考えていた事が、ひとつひとつの粒子についての基本方程式をスーパーコンピューターのパワーで解くだけで再現できるし、今まで解けなかったこともできるようになるという話だった。実例を見せられると「うーむ」と思う。つまりは現象論的に作られていたフレームワークが計算機の力の前で解体していくということだ。

うちの研究室のシグナル伝達経路のシミュレーションを引っ張っているAさんは、随分刺激をうけたようで、スーパーコンピューターの使いこなし方について食い下がって質問していた。とりあえずこの酔狂なセミナーも効果はあったようでよかった。

Iさんと「下鴨茶寮」まで歩き、雨の中を少し遅れて着く。まずは茶室に案内されて一服。その後、雨の庭をながめられる部屋で懐石料理をいただく。舞妓さんがついてくれて話し相手をしてもらう。さすがに座持ちはうまい。料亭にも最近は中国人、韓国人がふえてきているそうで、舞妓さんも英語の勉強に余念がないらしい。鱧の湯引き、鱧と松茸の小鍋。九条ねぎを鱧で巻いてあぶったものなど、どれもおいしい。冷酒を随分飲んだ。

そのあと、タクシーで四条まで行って、「木屋町サンボア」で少しお酒を呑んで帰った。