昨日整体に行って1時間ほどしっかりもんでもらったおかげで随分楽になった。今までは海外出張すると調子が戻るのに時間がかかっていたが、今回はお陰で早めにいつものペースに戻せそうな感じだ。
1週間出張している間に季節が進んで、あじさいも咲き始めた。近所の疎水で蛍が飛び始める頃だ。
出張中に読んだ3冊目はポアンカレの「科学と方法」
- 作者: ポアンカレ,吉田洋一
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1953/10/25
- メディア: 文庫
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何箇所か参考になった点はあったが、なかなかぴんと来ないというのが正直な感想。
数学的推理における直感と帰納法の役割を強調していたのが印象的だった程度。数学の教育をする際に、既にできあがったものを整理して論理のみに訴えて教えるのは下策で、十分な個別例からの帰納を活かしつつ、直感に訴えて教えるべきだ。というのがポアンカレの主張で、当時は十分新しかったのかもしれないが、現代では、数学の抽象化の行き過ぎに対する反発・反動は初等・中等教育にまで降りてきていて、今となっては「いかにわからせるか」の大事さは広く共有されているのではなかろうか。
持っていった本が切れそうになったので、サンフランシスコ空港の書店で買ったのがGerald M. Edelmanの新作(2006年)"second nature - brain science and human knowledge"
前作の「心は空より広いか」での「意識」の脳科学的視点からの議論をさらに哲学的に深め、脳生理学、心理学、哲学を腕力で束ねた力作。といっても本文は150ページほどの軽装本でコンパクトに書かれている。「心は空より広いか」ではあまりに明快な説明に少し落胆したものだったが、それが誤解だったというのがよくわかった。エーデルマンのperspectiveはずっと遠くまで届いているので、そこから振り返ると「意識」の脳科学的視点からのモデルは当然非常に明快なものになる。たとえば茂木健一郎が、神々しく取り扱っているクオリアは、エーデルマンのdynamic coreのモデルでは、"Qualia are just those discriminations, each entailed by a different core state"と一言で具体的に記述される。明快である。
本作のkey conceptはbrain-based epistemology(認識論)である。クワインの認識論を知らずに読んだのでかなりわかりにくかったが、なかなか面白そう。その部分だけでも時間をみつけて再読したい。
エーデルマンのThe Neurosciences InstituteではDarwinというシリーズのロボットが開発研究されている。開発のベースはエーデルマンのdynamic coreのモデルである。実物になると説得力がある(写真つき)。また、その延長上にconscious artifact(人工意識)の構築も視野に入れているらしい(まだまだ遠い話だと断ってはいるが)。ペンローズは2050年までに発生の基本的なメカニズムは理解できる(人工発生が可能になる)とこの間の本で言っていたし、21世紀の中盤までには生物学の現在のブラックボックスはあらから片付いて、今とは全く違う景色になっているかもしれない。そのときの研究テーマは何だろう?