エヌ氏の成長・円錐

小胞輸送研究をはじめて18年めの分子神経科学者の日々雑感

それは祈りに似ている

この夏の温度の上がり下がりはいつもより極端な気がするが、気がするだけかもしれない。


気になっていたこの本を読む。
白井聡 「永続敗戦論」


著者も言っているようにここに書かれていることの大部分は特に新しいことではない。私にとって興味深いのは現在30代半ばの著者が、どういう内的必然(それはもちろん主に経験によって形成されるものである)に突き動かされてこういった内容を一気に書き上げたのかということである。共感できる部分は多いのだが、たとえばレヴィナスの有責性の哲学を座標にとった時に、著者の主張が何らかの残響のように聞こえる時がある。むしろ私にとってそれは祈りに似ている方がなじみがある。


「『あなたがすることのほとんどは無意味であるが、それでもしなくてはならない。そうしたことをするのは、世界を変えるためではなく、世界によって自分が変えられないようにするためである』(ガンジー

3・11以降2年の月日が流れたが、ガンジーのこの言葉は私を支えてくれているし、この間この言葉を実践している有名無名の少なからざる人々の姿は、私に勇気を与えてくれている。『侮辱のなかに生きる』ことに順応することは、『世界によって自分が変えられる』ことにほかならない。私はそのような『変革』を断固として拒絶する。私が本書を読む人々に何かを求めることが許されるとすれば、それは、このような『拒絶』を共にすることへの誘いを投げ掛けることであるに違いない」