昨日、お昼過ぎに下の子と川べりの散歩に出たところ、出町柳の三角州のところで、子供達が裸足になって川遊びをしていた。もちろん、うちの子もすぐに裸足になって飛び込んで行った。待つこと1時間。とはいっても、こういうときのためにiPodを持ってきているので、平原綾香を聞きながらの日向ぼっこをする。紫外線は強いのだろうが、空気は乾いていい気分である。
今野浩の「すべて僕に任せてください」を読む。
- 作者: 今野浩
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2009/04
- メディア: 単行本
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生協の理系新刊コーナーでこの本を見たとき、特にそそられはしなかった。手にとって、帯に「元東工大教授が、共に勤務した研究者の半生を通じて明かす、理工系大学の実態」とあったので、少しその気になってなかをぱらぱら見て、何とはなしに購入。
たぶん著者がこの本で描きたかったのは、年下の同僚(天才的金融工学者)が、世直し=社会のためになる金融工学技術・システムの開発に命を削り、文部科学省の思惑やら有力大学のしがらみやらに絡め取られて思い半ばで死んでしまったことについての鎮魂であろう。それはそのまま、まじめな技術者ほど報われない現代日本社会への怒りとして表現されている。
なので、理工系大学の実態といっても、著者はORの専門家で理論屋さんなので、手を動かしてなんぼの実験屋の生態とは随分距離がある。むしろピベド(ピペッド奴隷)の悲鳴はブログ界に満ちていて、活字にはまずならない。この本は、運良く大学のポストを手に入れた著者の目から見たときの大学行政のおかしさに満ちている。
特に著者が研究科長として、「理財工学研究センター」をぎりぎりで概算要求に押し込むくだりは、普通活字にならない話である。(こういうことは、遠いうわさとしてしか聞いたことがないので、活字であからさまに目にすると少し驚いてしまう)
「経営からの支援が得られることは決まったが、もう1つの大問題は大学の事務局である。彼らは木村・内藤両学長の支援がある提案に理解を示してくれたが、8人の人員要求にはけんもホロロだった。学内から何人か定員をまわすにしても、このセンターは5名が限度だという。
一方私は、大蔵省でただ一人金融工学がわかるといわれている高官から、次のような激励を得ていた。「理工系大学の金融への参入は焦眉の急だ。文部省が8名を要求してくれば、満額回答を与えるよう努力しよう」
しかし私はこれを学内で口にすることはできなかった。文部省から見れば、本省の係長程度の存在に過ぎない一教授が、大蔵省高官と交渉して内諾を得たなどということがわかると、通る話も通らなくなるからである。−−
そこで私は戦線を縮小し、要求人員を8名から5名に減らした。白川は最低でも6名は必要だと主張したが、そうもいってはいられない事情が発生したからだ。東大の「先端科学技術研究センター」が、ほとんど同じコンセプトのセンター設立を要求することになったからである。
強敵の出現に緊張が走った。何が何でも東大にだけは負けたくない。この際手堅い要求をまとめ、絶対に設立を認めてもらおう。これが事務局長の意見だった」
研究には金がかかる。金を集めるには政治が必要になる。今の私にはまだそれをこなす力量はないなというのが感想だった。