明日からCERNのLarge Hadron Colliderがようやく稼動するというニュースが夕刊に出ていた。ぶつける粒子のエネルギーの上限が一挙に7倍になるとかで何か面白そうなことが出てきそうである。5千億円の費用は安いのか高いのか?一番高い戦闘機が100億円だそうだからまあこんな数字になりそうではある。
金子邦彦の「カオスの紡ぐ夢の中で」を読む。
- 作者: 金子邦彦
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 1997/12
- メディア: 文庫
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前半はカオス・複雑系といった辺りを巡るエッセイで、後半は物語を生命進化のようにコンピューター上で進化させるというアイデアの小説。
評価評価に追われて、次第に流行を追うばかりになりつつある科学者に対して科学の本来に立ち戻ってはどうかと諄々と説かれたもので、一日ほど調子が狂った。自分のやっていることがパズルや詰め将棋のように思えると、やはりふと考え込んでしまう。
「多様な振る舞いの中からルールが形成されていく過程を調べようというのが複雑系研究の主要目標の一つであると僕は考えている。
では、どうしたらよいのであろうか。
長期的には3つの可能性があると思う。新しい数理哲学の模索。今のデジタルコンピュータとは違う思考機械の構成。そして認知意味論で試みているように、生物にせよ言語にせよ実際の例を枚挙していってその中からルールのでき方の規則を探ることである」
「脳の理論がなかなか飛び立てないのは、熱力学レベルでの「システム」の理論がはっきりしないままに、統計力学的な「神経回路網」を研究しようとしていることにも一因があると思われる。このことは、神経回路の「要素」レベルで今でも用いられているシナプスの可塑性理論が、マクロなレベルの理論である心理学の研究者ヘッブによって提唱されていることに典型的に見られている。つまり、ヘッブの理論はマクロとミクロレベルの双方向を考えて初めて出てきた理論であり、決してミクロな神経の性質を追っていて出てきたものではないのである」
(補記:この記事を書いたあと、しばらくして田崎晴明先生の『熱力学の公理論的構成』(こんな題だった)の最初の1/3を読んで、こういう形で構成できるのだと思ったので、記述を補いたい。June 10, 2018)