エヌ氏の成長・円錐

小胞輸送研究をはじめて18年めの分子神経科学者の日々雑感

何だか言葉にしたいいくつかのこと

いろいろ理由をつけてしばらくブログをさぼっているうちに、何だか言葉にしたいいくつかが溜まってきた。

 

(1) 本質を捉えることの方が役に立つことより重要だ。

 

(2) 研究者としてやっていくためには、結局は演繹と推論では届かない時期が来る(と思う)。パースが提唱したapdactionかそれに似たものがどうしても必要だ。これだけ情報にあふれた環境では、演繹と推論では何かに似たものしか出てこない。より正確により緻密に考えようとするほどその届かなさが意識されてくる。

 

(3) 科学者は、現実を理解するためにモデルを作るのであって、モデルを作るためにモデルを作るのは筋が良くない。

腑に落ちることは大変大事だが、確証バイアスの存在を考えると「腑に落ちたい」という過剰な欲望は危険である。現実は人間が理解できるようにできているわけではない。したがって、モデル化を目指す理論家は自制的でなければならない。

 

(4) 新技術は高い確率で革新的知見につながる。一方で新技術は優れているほど、あっという間にに陳腐化するのでその路線を貫こうとすると大変である。全く役に立たなくなることもある。

Northern blottingはRT-PCRに置き換わり、DNase I footprinting はChip Seqに置き換わった。でも、mobility-shift assayやSouthern blottingは生き残った。

電験の技術も構造生物学も生き残った。ただ、alpha-foldは、ごく一部の創造的な人たちを除けば構造生物学者の多くに商売替えを強いかねない。