エヌ氏の成長・円錐

小胞輸送研究をはじめて18年めの分子神経科学者の日々雑感

戦後史の正体

あまりの暑さで折角買ってきたほおづきが赤くなる前に萎れてしまっている。


孫崎亨の「戦後史の正体」を読む。

戦後史の正体 (「戦後再発見」双書1)

戦後史の正体 (「戦後再発見」双書1)

創元社の戦後再発見双書の第一巻。いろいろな意味で考えこまされる一冊。
いろいろな人が「日本は独立国とは言えない」と言っていて、まあ何となく意味が伝わるような
気がしていたが、この本はほとんどの部分について典拠を示して、そのことを冷静に指摘している。


戦後70年を学校で教えられるとおりに受け取ると、いろいろとおかしなこと気がつくが、そのうちのいくつかの疑問はこの本を読むことである程度整理できた。もちろんいくら資料に基づくといっても、資料を書いた人がいる以上、それが事実かどうかについては一定の留保が必要なわけだが。


「事実、1945年9月2日、日本は降伏文書に署名した直後、降伏とは何を意味するかという厳しい現実を思い知らされることになります。
「日本を米軍の軍事管理のもとにおき、公用語を英語とする」
「米軍に対する違反は軍事裁判で処分する」
「通貨を米軍の軍票とする」というのが、最初の布告案でした」

「このとき、朝海浩一郎(のちの駐米大使)がボーレーに質問しています。朝海は当時、終戦連絡事務局の総務部にいました。
『日本人の生活水準を、朝鮮人インドネシア人、ベトナム人以下に落とそうとするつもりですか』
この質問に対してボーレーは、
『日本人の生活水準は、自分たちが侵略した朝鮮人や、インドネシア人、ベトナム人より上であっていい理由はなにもない』と切り捨てています」

占領は軍事占領そのものであって、占領軍が日本について好意をもつ理由がなかったことがこうしたことでよくわかる。いわゆる戦後史のかなりの部分は、日本人がそうした事実を受け入れやすいように作られたお話だと考える方がおそらく真実に近い。最近の韓国や中国での動きについて、「偏向教育が悪い、目に余る」という批判をよく目にするし、報道のとおりであればそういうところはあるとは思うが、日本の戦後教育についてもほとんどどうレベルの「お話作り」が行われていたというのが冷静な評価ではないか。その点を直視することなしには、国家百年の大計を立てることも難しいだろう。


「検察は米国と密接な関係を持っています。とくに特捜部はGHQの管理下でスタートした「隠匿退蔵物資事件捜査部」を前身としています。その任務は、敗戦直後に旧日本軍関係者が隠した「お宝」を摘発し、GHQに差し出すことでした。
米国の情報部門が日本の検察を使ってしかける。これを利用して新聞が特定政治家を叩き、首相を失脚させるというパターンが存在することは、昭電事件からもあきらかです」

これと同じことが現在進行形で進んでいるのを見せられているわけだろう。
この何年かのあれこれを見ても、国家とは重い仮構だと思う。しかし私たちはこれに変わるシステムを持っていないわけだから、仮構とその現実の重さについて、知ろうとするべきだろうし、知らせるべきであろう。