エヌ氏の成長・円錐

小胞輸送研究をはじめて18年めの分子神経科学者の日々雑感

野口悠起雄の正論

今日は家内と子供たちが生協食堂に昼ごはんを食べにきた。七大学(旧帝大)対抗戦記念の大学パフェが目当てである。今日は名古屋大パフェと九州大パフェ(各340円)がメニューに出ていた。名古屋大パフェは外郎とアンパンとキャラメルコーンが入っていた。九州大パフェはふかし芋、カステラ、キャラメルコーンが入っていた。九州大パフェは娘が喜んで食べていたが、名古屋大パフェはいまいちのようだった。

「超」勉強法で有名な野口悠起雄の「「超」経済脳で考える」を読む。

野口悠紀雄の「超」経済脳で考える

野口悠紀雄の「超」経済脳で考える

経済学を自在に用いて経済・政策の「通説」の間違いを正すという本。「少子化対策として出生率引き上げは適切でない」とか、「財政赤字は家計の借金とは違って国内でお金がまわっているだけなので問題ではない」とか、「食料自給率にこだわるのは経済学的には意味がない、水平分業と割り切るべし」とか。うーむと唸る話が続けざまに出てくる。

ただし、話は後半になるほどややこしくなってくるので、ちゃんとついてはいけない部分が多々あった。経済の話はいきなり読んでも難しいやというのが正直な感想。でも高校時代の政治経済で習ったこととは随分距離があるような気がする。この本に書いてある事が本当なら、将来非常に大事になる考え方だろうから、これくらいまでは無理しても高校で教えた方がいいのではあるまいか。と思った。

例えば企業の時価総額を「一人当たり」で見ると、アメリカの大企業と日本の大企業には極端な差がある。グーグルは、一人当たり時価総額が2500万ドル。アップルやマイクロソフトで400万ドルあたり。これに対し、日本の顔トヨタで79万ドル。SONYは31万ドル。昔の「日本の顔」松下電器は15万ドル。日立製作所は8万ドルだ。要するにアメリカには次世代の企業が育っているのに対し、日本にはそのcouterpartとなる企業は育っていないと言うことがはっきりわかる。

「これまでの日本は人口過剰だったので、農業・漁業・卸売・小売業への(高価格による)所得移転によって生産性の低い分野に所得補助を行うことが必要だった。しかし、今後の日本では、人口が減少するので、そうした補助は必要なくなる。それどころか、労働力不足が予想されるので、こうした部門の生産性を向上させ、所得補助なしで十分な所得が得られるようにすることが必要だ。少子化社会に向かって必要とされるのは、出生率を引き上げることではなく、こうした政策である」

「将来の株価は、現時点では入手できないデータによってのみ変動する。つまり、公表されたデータを使って将来の株価を予想することはできない。だから、「市場を打ち負かす」ことはできないのである。投資から得られるのは、平均的に見れば、当該資産のリスクに見合って平均的に得られる「ノーマルリターン」だ。よく「株でサラリーマンも億万長者」という類の投資指南書があるが、そうしたことを確実に実現するのは不可能である」

「将来の株価を予測できないのは、経済学が無力だからではなく、株式市場が公知の情報をすばやく株価に反映させてしまうからだ。その意味で株式市場が効率的に機能していることが、将来の株価を予測できない基本的な原因である」
一時期、複雑系科学を応用すると株価が予想できて儲けられるという話があったが、どうも真っ赤な嘘らしい。

永久機関錬金術が不可能であると認識されたことこそ、近代的な物理学や化学の出発点だった。将来の株価や為替レートの予測が経済学の使命と考えられている現状は、経済学がまだ近代科学として確立されていない(あるいは、人々が近代科学と認めていない)ことを示すものと言えよう」
一理あるような、あるいは単に開き直っているだけともとれるような。

「「食料自給率を高めるべし」とする主張は、国内の農業生産を守ろうとする供給者のエゴイスティックな主張でしかないのである。それにもかかわらず、こうした主張を信じて疑わない人は、実に多い。小学校の時からの教育で、「自給率が低いのは不安」という「スリコミ」ができてしまっているからだろう。「自給率向上」という強迫観念は、日本人の意識を支配し、知らない間に生活水準向上を妨げている「誤った通念」の典型的なものだ」

国債発行に関して重要な事は、「年収700万円のサラリーマンが毎年300万円の借金をするもの」と騒ぐことではない。必要なことの第一は、国債で調達された資金が、将来の日本人の所得を増やすような目的に使われているかどうかを監視することだ」

正論はしばしば実はあやまっているが、野口悠起雄の正論は正しいのだろうか。