エヌ氏の成長・円錐

小胞輸送研究をはじめて18年めの分子神経科学者の日々雑感

趣味で物理学

同じキャンパスで神経解剖学を教えているK先生のホームページを見ていたら、K先生は実はシステム神経科学の硬派であることがわかった。うれしくなってホームページの「読者のコメント」にあてて感想を送ったところ、早速返事が来た。鎧袖一触。「ニューロンに意識の起源を求める輩は、システム神経科学者とは言わぬ。これでも読んで出直して来い」。

http://www.mbs.med.kyoto-u.ac.jp/cortex/20_Corticothalamic_loop.pdf

システム神経科学者はこれくらい帝国主義者でなくては面白くない。頭をひねって隙を探して質問書を送付。答えが楽しみ。

20代に4年間お世話になったO先生に、暑中見舞いがてら、そろそろ独立を考えています旨、書いてみたところ、「ポストを探してみるから適当な別刷りを見つくろって送ってきなさい」という葉書が届いた。恩師とはありがたいものだと思った。O先生にはお世話になってばかりである。私もひたすら与え続ける姿勢を見習いたい。

広江克彦「趣味で物理学」を読了。100万ヒットの人気ページ「EMANの物理学」の書籍化である。

趣味で物理学

趣味で物理学

とりあえずは力学と電磁気学で一冊になっている。うまーく数式の余白を拾い上げているのに感心した。学生の頃は、問題を解くことにひたすら追われて、数式の背後にあるものや、数式の実体に思いをめぐらすことができなかったが、歳もとり、試験のプレッシャーとも無縁になると、昔見えなかったものがだんだんに見えてくる。よくある話である。そういう人間にとって、こういう拾い読みのできる物理本はありがたい。

電磁気学におけるエネルギーと運動量の関係は相対性理論の結果からも導かれるのだが、その点は見事であり、あまりにも美しい。たとえ単位の次元からそのような形になるだろうという予測がついたとしてもだ。「相対性理論は間違っている!」と声高に主張する人々が世の中に多くおり、何も知らない人々は声の大きい人に従う傾向があるのだが、そういう人々は相対性理論電磁気学の構造と深い関わりを持った理論であって、容易には否定できないことを悟るべきである」

まことにそのとおりなのだが、一方で量子力学をつきつめていくと(あるいは量子重力論をつきつめていくと)相対性理論との相克がどうしようもなくなることも事実だろう。むしろ相対性理論を越える理論が建設された時に、はじめて相対性理論は正しく評価されることになるのだろう。