梅雨が空けて、山鉾巡行も終わった。とうとう暑い夏がやってきた。今年の夏も長くなりそうだ。夏が来ると一度くらいは鱧を食べなければすまないのだが、さて今年はどこで食べたものか。お手軽に済ますのならば、実は生協食堂でも出してくれるのだが、それも味気ない。どこか新しい店でも見つけたい。
- 作者: 福田宏年
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 1991/10
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作家や映画監督の評伝を読むのは難しい。作品を読んで自分で持っているイメージが、履歴を知ることでふくらめばよいのだが、イメージと履歴の間にずれがあると、読んでいてだんだん苦しくなってくる。好きな作家の場合はことにそうだ。その意味では、「井上靖評伝覚」は手堅い仕事だった。ただ、発見はあまりなかった。あったとすると、井上靖が毎日新聞の記者だった時に、宗教と美術が担当だったこと。その部分は司馬遼太郎の経歴と見事に重なっているわけだが、二人ともその経験を見事に昇華させている。
「終戦後、私は長い間おりていた新聞記者としての自分が、なんとなく顧みられる気持になった。新聞記者として、本気でやってゆくか、でなければなにか他のことをやらねばならぬという気持になったのである。
私は無性に自分を表現したくなったが、それは新聞社のかたすみで生き続けてきた者が、ふいに一度は襲われるにちがいない熱病のようなものであった。長い間、新聞社の機構の中で自分というものを出すことを押さえつけていた者の、自分への反逆のようなものであった。終戦後、私は詩や小説を書き出したが、詩人になるつもりも小説家になるつもりもなかった。ただ自分をなんらかの形で表現したかったまでのことである」
評伝といえば、高橋治の「絢爛たる影絵」こそ忘れがたい。
- 作者: 高橋治
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小津安二郎という無二ともいえる個性がみごとに掘り込まれ、かつ高橋治の小津への想いが脈々と伝わってくる名作だ。これ一作で高橋治の文章力にほれ込んだ。実は、たぶん高橋治の自宅が同じ町内にある。小さな通りふた筋しか離れていない。いかにも高橋治宅という雰囲気の日本家屋である。
高橋治では「名もなき道を」こそ忘れがたい。人の口の端にのぼることの少ない作品だが、ただそくそくと胸に迫ってくる。
- 作者: 高橋治
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- 発売日: 1991/10
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