5月1日号のNatureに面白い記事が出ていた。"Quantum all the way" by Philip Ball
古典力学的世界観では、モノは同時に2つの状態はとれない。'either/or' である。これに対して、量子力学的世界観では、モノは平然と2つの状態をとる。'both/and'である。言い換えればモノは状態の重ねあわせで記述される。この2つの世界観の間には断層があるはずだ。
ところが、そうした断層はない、という主張があるらしい。その紹介がこの記事である。Questionは、Exactly when and how does 'both/and' become 'either/or'?である。
その肝はdecoherenceらしい。しかも、the quantum-classical transitionと言われると、ある空間的サイズで転移しそうな気がするが、それは誤りで、転移は時間的なものとなるそうだ。うーむ、難しい。ただ、そう考えると、量子力学的世界観と古典力学的世界観の間に明確な境界はなくなり、古典力学的世界観は量子力学的世界観からスムースに創発してくるそうな。
学生時代に、光は粒子と波動の二重性を持つというのがすんなり飲み込めなかった。今でもそうである。そのとげが解消したのは、恥ずかしながらそれから十数年たって、ファインマンの教科書に出会ってからである。ファインマンは言う。「光は粒子でも波動でもない。量子である。量子の存在を日常の概念(粒子とか波動とか)で理解する事はできない。つまりは誰も量子のことを知らない。」そう思ってしまうことで悩みは解消した、はずであった。
ところがそこへ来てこの記事である。寝た子が起こされた気分である。「古典力学的世界観は量子力学的世界観からスムースに創発してくる。」がーん、である。でも考えてみたら、量子力学的世界観と古典力学的世界観の境界はどこか?とか、どういう風に転移しているわけ?というのは当然の疑問である。ペンローズの分厚い本でも読んでみたら、このモヤモヤは解消されるのだろうか。
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この話は「無限」「連続」といったモデルとしての「実数論」と「自然そのもの」の関係と対応する関係にありそうな気がする。また、「時間の再定義」もつながっているらしい。実は、これら全てはつながっているのだろうか。