エヌ氏の成長・円錐

小胞輸送研究をはじめて18年めの分子神経科学者の日々雑感

非正規レジスタンス

夕立が来た。雨上がりの道路を自転車で帰る。湯気が立ちそうな暑さだ。

石田衣良の「非正規レジスタンス」を読む。

非正規レジスタンス―池袋ウエストゲートパーク〈8〉

非正規レジスタンス―池袋ウエストゲートパーク〈8〉

石田衣良は小説の骨法をわかっているので安心して読める。今回の池袋ウエストゲートパークⅧはメッセージ性が強い。特に、最後の中篇「非正規レジスタンス」は日雇い派遣の実体を告発して容赦ない。

文中にもあったが、あのオペラ好きの心情右翼の単純ナルシストの前総理が登場してから、日本という国の根本にあったセーフティネットが壊れ始めたのは事実だと思う。それは次の世代から希望を奪う事だということが、若い世代と接する仕事をしていると実感として感じる。いまの自分にできるのは、自分の子供をしっかり育て、研究室や何かで縁あって接する若者に「人生はそんなに直線的に生きなくても大丈夫だ」と少し支えてやり、かつ悪いと思ったことは悪いと口に出すことくらいだろう。

国の大本をあの前総理のような非人間的な人たちが動かしているのはひどい間違いだ。とりあえずは政権交代させてみるしか手はないと思う。どちらも人間なので大きな期待はできないだろうが。どこでこういうひどい間違いがはじまったのだろう。分かる人がいたら是非教えてほしいと思う。

石田衣良の小説は最後が救済で終わる事が多い。それで小説のリアリティが失われそうになることもあるが、後味の悪い話は書きたくないというのは素朴な気持として理解できる。もちろん人生はもっと苦いことはよくわかっているのだが。