エヌ氏の成長・円錐

小胞輸送研究をはじめて18年めの分子神経科学者の日々雑感

Really amazing

New Orleans5日目。今日も暑い。


圧倒的なlectureを2つ聞いてしまったので、飲みに行く気が失せて、まじめに学会のメモを整理し直す。


今年のGruber記念メダルはUCSFのJan先生夫妻で、記念講演も圧倒的だったが(ものを知らないのはこわいもので、Jan先生夫妻については最近のdendriteの話ばかりで記憶していて、そもそもShaker (K channel)をクローニングしたのがJan先生夫妻だというのをはじめて知った)、Yuh Nung Jan先生の方が、講演の最後のあたりで、「私たちの研究室に学生またはPDで来たのが全部で128人で、そのうちPIになったのが92人です」というスライドを出して、あの広いHall Dにいた人が一斉にため息をついた(気がした)。


実に70%強がPIになっているとは現代の話とは信じがたい。というかPIになれなかった3割弱の人のことを考えるとこれはたまらないだろうなあと思う。

年代別のデータを出してほしかった。推測では、PIになれなかったのは、ご夫妻がUCSFにラボを持った初期に集中しているはず。Shakerのcloningで一流ラボの仲間入りをしてからは、selectionを厳しくしまくって、そのまま普通にやればPIになれる凄腕ばかりを採っていたのではなかろうか。


その話で少しげんなりしていたところに、5時すぎからのPresidential lectureに出てきたRothman教授の話で完全にあっけにとられた。"Really amazing"だった。ゆっくり昔話を聞いて勉強しようと思っていたら、20分すぎからこの3年くらいの火を吹くようなデータがばんばん出てきて、「complexinがprimary clamp兼activatorで、synaptotagminがsecondary clampだ」という仮説(つづきはもっとすごかったが簡単に書けないので以下略)をこれでもかこれでもかというデータの厚みで押し出してきた。たぶん日本人ならここまでやらなくてもいいと思いそうである。というか、ここまでやる人がいるというのにあっけにとられた。これだけ難しい話を、構造生物学、FRET、microcarolimerty、生理学等々という信じがたいほど範囲の広い技巧を駆使して詰め切っている。
今やっている話は結構近いところにあるのだが、大丈夫だろうと思っていたデータの解釈についてももう一度考えてみようと思ってしまうど迫力だった。


学会の残りがあと3日でよかった。