エヌ氏の成長・円錐

小胞輸送研究をはじめて18年めの分子神経科学者の日々雑感

物理

あてにならない予想 -「心」の装置とその理論、および非線型性への見通し

情報理論は、クロード・シャノン@ベル研が空からつかみ出した。フロイトのアイデアは面白くもあり受け入れがたくもあるが、情報理論の視点から見ると、フロイトの唯一の誤りは、われわれの「心」を作り出している装置をエネルギー制御のシステム(あるいは…

計算機の哲学 computer-enhanced phylosophy

1)正確な表現ではないが客観的存在と主観的存在にわけるとすると、まず主観は現象学的経験からわかるとおり、「夢か現かわからない」がゆえに純粋な意味での(あるいは厳密な意味での)因果は存在しないという主張が可能である。また客観も、それが存在で…

認知神経科学の枠組みで、意識における不確定性原理の相当物は発見できるだろうか

tnakamr.hatenablog.com 以下は、リー・スモーリンの「迷走する物理学」の一節。 「最近は、量子重力の研究をしている者はたいていが、因果性こそが根本だと−したがって、空間の概念が消えた水準でも意味をなすと−信じている。量子重力への取り組みで、これ…

あてにならない予想 -「心」の装置とその理論、および非線型性への見通し

情報理論は、クロード・シャノン@ベル研が空からつかみ出した。フロイトのアイデアは面白くもあり受け入れがたくもあるが、情報理論の視点から見ると、フロイトの唯一の誤りは、われわれの「心」の装置をエネルギー制御のシステムと考えたことにあるのだろ…

小説 複素関数論・超解像顕微鏡・摂動論

複素関数論を使うことで波動関数からeventsの確率を計算することができる。「猫は生きているのか死んでいるのか」の確率がわかる。Welcome to the real world. そこで物理学者の卵は一所懸命に複素関数論を勉強する。ストークスの定理と留数定理。 ➡波動関数…

モデル構築についてのアイデア

森博嗣の最近の作品のパロディ風に モデル構築とは、無数のモデルを逐次想定し把握し、それぞれの結果までの経路をトレースして、その結果を比較することで選ぶというプロセスをさす場合があるようだ。そこではデジタル的飛躍につづくアナログ的な(と見せか…

熱力学の第二法則を量子力学から導出する―物理的な時間概念の明確化へ―意識の中で流れる時間

秋空の美しさはあの雲の形によるのだと思う。 「量子力学から熱力学第二法則を導出することに成功〜時間の矢の起源解明へ大きな一歩」 http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/a1e326855ceb0a640f75c08d2c0fb423東大大学院工学研究科の沙川先生の研究室がPhysical…

配置と抵抗

昨日、Maker Conferenceに行ってきた。息子がはんだづけを教わるのを後ろでみながら「教え方のうまい人だなあ」とすっかり感心してしまった。 ベジャン&ゼインの「流れとかたち」を読む。流れとかたち――万物のデザインを決める新たな物理法則作者: エイドリ…

素粒子論のランドスケープ

(10/12書き出し)夕方からさすがに気温が下がってきて、それらしい西空になった。あまりの暑さで息子の運動会をさぼってしまった。 大栗博司の「素粒子論のランドスケープ」を読む。素粒子論のランドスケープ作者: 大栗博司出版社/メーカー: 数学書房発売日:…

クロード・シャノンとその伝説

庭の鉢の赤い花が咲いていて、そろそろ晩夏になるのかと思う。 ジョン・ガードナーの「世界の技術を支配するベル研究所の興亡」を読む。世界の技術を支配する ベル研究所の興亡作者: ジョン・ガートナー,土方奈美出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2013/06/2…

マヨラナニュートリノには時間の矢がない

先週、「風立ちぬ」を見て、昨日、内田樹の評を読んでもういちど観に行こうかと考えている。 ジョアオ・マゲイジョの「マヨラナ 消えた物理学者を追う」を読む。マヨラナ 消えた天才物理学者を追う作者: ジョアオ・マゲイジョ,塩原通緒出版社/メーカー: NHK…

カラビ=ヤウ多様体が唯一の解である

日垣英語塾13日め。大変だがいいシステムだと感心する。やはりシステムは大事。 ヤウ/ネイディスの「見えざる宇宙のかたち」を読む。見えざる宇宙のかたち――ひも理論に秘められた次元の幾何学作者: シン=トゥン・ヤウ,スティーヴ・ネイディス,水谷淳出版社…

経路積分から出発する

庭のクレマチスが大輪の花を咲かせている。木々の若葉も伸びてきて、5月も半ばだと感じる。 吉田伸夫の「明快量子重力理論入門」を読む。明解量子重力理論入門 (KS物理専門書)作者: 吉田伸夫出版社/メーカー: 講談社発売日: 2011/07/26メディア: 単行本(ソ…

ファインマンさんの流儀

1年は早いもので、先週の金曜日がラボの送別会だった。昨年は会の直前に大地震があり、キャンセルせざるを得なかったので、ともかくも今年は無事にできただけありがたい。 ローレンス・クラウスの「ファインマンさんの流儀」を読む。ファインマンさんの流儀―…

エントロピーは観測の瞬間に飛躍的に増加する

昨晩はこちらに来てはじめて文楽を見に国立劇場に行った。菅原伝授手習鑑。三味線も語りも絶品だった。特に豊澤富助の三味線はよく鳴っていてほれぼれする。 渡辺慧の「時」を読む。時 (KAWADEルネサンス)作者:渡辺 慧河出書房新社Amazon これはここ数年読み…

自由意志、局所性、決定論

もみじはわからないが、銀杏は関東の方がきれいかもしれないと最近は思う。 筒井泉の「量子力学の反常識と素粒子の自由意志」を読む。量子力学の反常識と素粒子の自由意志 (岩波科学ライブラリー)作者: 筒井泉出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2011/04/28メ…

形式的なものと直観的なものとの弁証法

反貧困のデモが世界各地で起きていることが盛んに報じられている。これはどういう流れなのかとできるだけ巨視的に見ようとしている。 パレ・ユアグローの「時間のない宇宙」を読む。時間のない宇宙―ゲーデルとアインシュタイン 最後の思索作者: パレユアグロ…

隠れていた宇宙

今朝は涼しい風で目が覚めた。久しぶりに近くを散歩する。秋らしく雲が高くにかかっている。 ブライアン・グリーンの「隠れていた宇宙」を読む。隠れていた宇宙 (上)作者: ブライアン・グリーン,竹内 薫,大田 直子出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2011/0…

ベイズ統計と統計物理

この間の日曜日に船橋まで玉村豊男展を見に行った。絵を買う元気はなかったので画集を買って眺めている。 伊庭幸人の「ベイズ統計と統計物理」を読む。岩波講座 物理の世界 物理と情報〈3〉ベイズ統計と統計物理作者: 伊庭幸人出版社/メーカー: 岩波書店発売…

不可能、不確定、不完全

今日は昼間は温度が上がり、庭の黄水仙がきれいに見える。海棠を買おうと話しているのだが、どこに植えるか話がまとまらない。 ジェイムズ・D・スタインの「不可能、不確定、不完全」を読む。不可能、不確定、不完全―「できない」を証明する数学の力作者: ジ…

量子の海、ディラックの深淵

随分日が長くなったが、今日は風が強く散歩日和ではなかった。 グレアム・ファーメロの「量子の海、ディラックの深淵」を読む。量子の海、ディラックの深淵――天才物理学者の華々しき業績と寡黙なる生涯作者: グレアム・ファーメロ,Graham Farmelo,吉田 三知…

情報エネルギー変換

11月にNature Physicsに出たという「情報エネルギー変換」の実験的実証の論文の話を目にしてすっかり感嘆した。http://www.chuo-u.ac.jp/chuo-u/pressrelease_files/kouho_926d762ef5d729c7544d1276739468c5_1289788403.pdfしかも、その「情報エネルギー変換…

数学-物理学-生物学

1) 数学が恒真文によって定義づけられるのであれば、数学の全内容は「AはAである」の一文に帰するのか?直観的にはそうでないと感じられるが、その根拠は何か? 解答の手がかり:「数学―その形式と機能」S.マックレーン ・数学は形式的なネットワークである…

宇宙をプログラムする宇宙

H先生への手土産に惣誉を取り寄せることにするセス・ロイドの「宇宙をプログラムする宇宙」を読む。宇宙をプログラムする宇宙―いかにして「計算する宇宙」は複雑な世界を創ったか?作者: セス・ロイド,水谷淳出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2007/11/10メデ…

明日をどこまで計算できるか?

昨日、有楽町まで出かけたら、駅前のビルにクリスピー・ドーナツの店があったので、会議の後に寄り道して12個入りを買ってきた。チョコ好きの長男は大喜び。 デイビィッド・ボレルの「明日をどこまで計算できるか?」を読む。明日をどこまで計算できるか?――…

エントロピーの勉強

先週の後半はバイオイメージング学会に行ってきた。特に印象深かったのは慶応大のK先生の話。多光子励起顕微鏡で使われるフェムト秒レーザは実は広帯域なので、遺伝的アルゴリズムで適応制御することで、色の違う蛍光蛋白質をたたき分けたり、褪色を2倍程度…

時間の矢、生命の矢

夕べは、近くで花火大会。どーんどーんという音が聞こえてきたらやはりむずむずしてきて、家内と自転車で音源の方へ向かう。途中の歩道橋に人が並んで見物していたので、それに加わることにする。たぶん5年ぶりくらいの花火だった。 ピーター・コヴニー&ロ…

基礎科学の手つかずの大地について

昨日の荒天とは打って変わって、いかにも春という軽快な光の楽しめる一日。こういう日には何をしていてもどこか楽しい。 大野克嗣の「非線形な世界」を読む。非線形な世界作者: 大野克嗣出版社/メーカー: 東京大学出版会発売日: 2009/06/27メディア: 単行本…

ブラックホール戦争

上の階のN教授の最終講義が行われ、200名は入るホールがほぼいっぱいになった。1時間半の予定が2時間を大きく超えるダイハードですばらしく高度な講義となり、おなかいっぱいになった。 レオナルド・サスキンドの「ブラックホール戦争」を読む。ブラッ…

光の場、電子の海

Iさんとの会話。 「ブライアン・グリーンの本にエントロピーは未来に向かっても増大するけど、物理法則は時間反転について対称だから、過去に向かっても増大するって書いてあったんだけど、それってほんと?」 「うん、本当だ」 「なんで?」 「それは、現在…