エヌ氏の成長・円錐

小胞輸送研究をはじめて18年めの分子神経科学者の日々雑感

数学

COVID-19の年だった2020年も最後の日

COVID-19の年だった2020年も最後の日。東京の感染者が1300人という知らせを聞いて家内と顔を見合わせる。 2020年はTwitterを使い始めた年だった。6月に再開された講義は全てリモートになったが、立ち話もはばかられる状況だったので何をどうしたらいいかがよ…

モデル構築についてのアイデア

森博嗣の最近の作品のパロディ風に モデル構築とは、無数のモデルを逐次想定し把握し、それぞれの結果までの経路をトレースして、その結果を比較することで選ぶというプロセスをさす場合があるようだ。そこではデジタル的飛躍につづくアナログ的な(と見せか…

異端の統計学ベイズ

今日は昨日に続いて朝から良く晴れている。関東はこういう時に空の広さを感じる。 シャロン・バーチュ・マグレインの「異端の統計学ベイズ」を読む。異端の統計学 ベイズ作者: シャロン・バーチュマグレイン,Sharon Bertsch McGrayne,冨永星出版社/メーカー:…

未来予測をわらえ

研究室の大掃除と忘年会が終わり、今日の昼までに年賀状も済ませて、遅ればせながら新年を迎える気分に転換です。 久しぶりに小飼弾さんのブログを見たところ、新著(数学者の神永さんとの共著)の話が出ていた。checkしたら面白そうだったので注文したとこ…

確率は、反復の枷を逃れて一度きりのものになる

夕日が裏の森の紅葉を照らし出しているのを見ると、いろいろなもやもやを忘れる。 シャロン・バーチュ・マグレインの「異端の統計学ベイズ」を読む。異端の統計学 ベイズ作者: シャロン・バーチュマグレイン,Sharon Bertsch McGrayne,冨永星出版社/メーカー:…

巡回セールスマン問題

学会で京都に出かけて久しぶりに京野菜やら鱧の湯引きやらを食べた。レベルが高いし、納得のお値段。 ウィリアム・クックの「驚きの数学 巡回セールスマン問題」を読む。驚きの数学 巡回セールスマン問題作者: ウィリアム・J・クック,松浦俊輔出版社/メーカ…

エンジニアリング

先日、Y財団の交歓会に参加した。正八面体の錯体の自己集合過程を計測する大変独自な方法を開発したchemistのtalkを聞いて大変感心する。報告の後の懇談会でよもやま話をしていて、「うまくいっていることを確認する方法があいまいなので、新しい実験系の開…

カラビ=ヤウ多様体が唯一の解である

日垣英語塾13日め。大変だがいいシステムだと感心する。やはりシステムは大事。 ヤウ/ネイディスの「見えざる宇宙のかたち」を読む。見えざる宇宙のかたち――ひも理論に秘められた次元の幾何学作者: シン=トゥン・ヤウ,スティーヴ・ネイディス,水谷淳出版社…

統計屋としての静かなプライド

明日から神戸での学会だが、午後には台風が来るとニュースで言っている。 デイヴィッド・サルツブルグの「統計学を拓いた異才たち」を読む。統計学を拓いた異才たち―経験則から科学へ進展した一世紀作者: デイヴィッドサルツブルグ,David S. Salsburg,竹内惠…

数学者の哲学、哲学者の数学

昨日あたりから花粉が飛んでいるのだろうか、のどや鼻が何だか熱っぽい。いつものことだが桜が咲くまでの我慢の季節だ。 砂田、長岡、野家の「数学者の哲学、哲学者の数学」を読む。数学者の哲学+哲学者の数学―歴史を通じ現代を生きる思索作者: 砂田利一,長…

数学内外での不完全性定理

卒論の季節。早々と一人が書き上げて少し楽になった。あとの4人はこれからがラストスパート。 トルケル・フランセーンの「ゲーデルの定理」を読む。ゲーデルの定理――利用と誤用の不完全ガイド作者: トルケル・フランセーン,田中一之出版社/メーカー: みすず…

問題を言葉で扱う

水曜日に熊本大のK先生の生命倫理の講義を聞く。後半は「心とは何か。体と別に心はあるのか」という話題をめぐる現在進行形の自分の考えを力説されて、珍しく熱気のこもった討議になった。慰労の食事会も大変楽しかった。 ペリー・メーリングの「金融工学者…

形式的なものと直観的なものとの弁証法

反貧困のデモが世界各地で起きていることが盛んに報じられている。これはどういう流れなのかとできるだけ巨視的に見ようとしている。 パレ・ユアグローの「時間のない宇宙」を読む。時間のない宇宙―ゲーデルとアインシュタイン 最後の思索作者: パレユアグロ…

最後の古典幾何学者

例年のごとく科研費の申請書書きのシーズン。いろいろメモを書き溜めておいたので、二度ほど部屋に立てこもってコーヒーで目をさまして集中して第1稿を仕上げる。 シュボーン・ロバーツの「多面体と宇宙の謎に迫った幾何学者」を読む。多面体と宇宙の謎に迫…

いかにして問題をとくか

このブログを書くそもそものきっかけになった大学時代からの友人と自由が丘のワインバーに行く。自由が丘は十数年前に一度来たきりなので、こんなに道が狭い町だったかと驚いた。 ポリアの「いかにして問題をとくか」を読む。いかにして問題をとくか作者: G.…

ベイズ統計と統計物理

この間の日曜日に船橋まで玉村豊男展を見に行った。絵を買う元気はなかったので画集を買って眺めている。 伊庭幸人の「ベイズ統計と統計物理」を読む。岩波講座 物理の世界 物理と情報〈3〉ベイズ統計と統計物理作者: 伊庭幸人出版社/メーカー: 岩波書店発売…

数学する遺伝子

欧米の報道では福島原発はmeltdownしたという伝えられ方をしていたが、今日の午後のニュースは東電もそれを認めたという意味なのだろうか。学術会議の物理学部会からのお知らせなども来ているが、歯がゆい話だと思う。 キース・デブリンの「数学する遺伝子」…

不可能、不確定、不完全

今日は昼間は温度が上がり、庭の黄水仙がきれいに見える。海棠を買おうと話しているのだが、どこに植えるか話がまとまらない。 ジェイムズ・D・スタインの「不可能、不確定、不完全」を読む。不可能、不確定、不完全―「できない」を証明する数学の力作者: ジ…

コンピュータで代替できない人間らしい能力とは抽象化だ

ニセコに移動。目抜き通りのあたりは日本離れした雰囲気でテレビでみたとおり。ただし、今日滑った人に聞くとここ数日は雪が降らず自慢のパウダースノー状態ではないそうだ。 新井紀子の「コンピュータが仕事を奪う」を読む。コンピュータが仕事を奪う作者: …

回路網の中の精神

昨日は娘の代わりに湯島神社に絵馬を掛けに行った。帰りにシネスイッチ銀座にまわって「シチリア、シチリア」を見た。 マンフレート・シュピッツアーの「回路網の中の精神」を読む。脳 回路網のなかの精神―ニューラルネットが描く地図作者: マンフレートシュ…

数学-物理学-生物学

1) 数学が恒真文によって定義づけられるのであれば、数学の全内容は「AはAである」の一文に帰するのか?直観的にはそうでないと感じられるが、その根拠は何か? 解答の手がかり:「数学―その形式と機能」S.マックレーン ・数学は形式的なネットワークである…

食える数学、食えない○○

金曜日に筑波山にラボ遠足にでかけた。ケーブルカーの出発点は宮脇駅。そこまでの道には出世稲荷。よく晴れた秋の日で、よいラボ遠足だった。 神永正博の「食える数学」を読む。食える数学作者: 神永正博出版社/メーカー: ディスカヴァー・トゥエンティワン…

数理リテラシーの精神

ラボの立ち上げで4月、5月の論文がチェックできていなかったので、まとめてチェックしたら、この時期にCell, Natureにphagosome maturetionにおけるRab5 to Rab7 coversionについて3本の決定的な論文が出ていることがわかった。読んでいるうちに、もうひとつ…

21世紀最初の天才数学者

民主党政権の科学技術政策の行方について、特に先月始まった仕分け以来の科学コミュニティ(もちろん自分や身の周りも含めて)の喧々囂々はすごいものがある。(たとえば、http://mitsuhiro.exblog.jp/12991996/)こういうことは同時代の意見として記録する…

世界のジェネレーターは見えない

朝、バスを待っていると、北大路の街路樹が8割がた葉を落とし、道の向こうにある和菓子屋さんが小豆を炊いている煙が見えるようになった。来た冬を感じる、同時に暖かくもある光景だ。 ナシーム・ニコラス・タレブの「ブラック・スワン」を読む。ブラック・…

デスティニー・ベクトル

最先端プロジェクトの採択課題のリストをみながら、ふーむなるほどとか思っていたら、いきなり物理学科の同級生の名前が出てきて驚いた。 生協書籍部でぶらぶらしていたら、日経サイエンスの10月号の表紙に「存在確率マイナス1」と書いてあり、「おっ」と…

衆院選の21世紀と数学の20世紀

衆院選の結果が出て、民主党が308議席を獲得して圧勝。私は民主支持だが、ここまでの大勝がいいことなのかと不安もある。ただ、政権運営に慣れてない民主党がそれなりにやっていくためには、この数が力にあるとも考えられるので、いいことかもしれない。…

数学を現代化した予言者たち

6月のドイコーヒーは香り重視のラインナップ。中でもタンザニア キリマンジャロプランテーションは格別にすばらしい芳香。深くて甘い香り。これで200gx3で3900円なら納得である。 マイケル・ブラッドリーの「数学を現代化した予言者たち」を読む。数学を現…

絶対数学。

先週の金曜日に、精神神経センターのH先生に指摘されたことがずっと気になっている。われわれの使っている系が人工的過ぎるのではないか、より生理的な系でも同じことが成り立っているのか、というコメントである。これは何とかせずばなるまいと感じて、今日…

はじめての現代数学

民主党の新代表が鳩山さんに決まった。29票という差からすると党内力学をそのまま反映したようだ。政治目標として「愛」を掲げられるような人を信用できるのかというのが個人的な感想だが、どう見ても麻生さんよりはましだろうから、是非がんばってもらいた…