エヌ氏の成長・円錐

小胞輸送研究をはじめて18年めの分子神経科学者の日々雑感

思想・哲学

COVID-19の年だった2020年も最後の日

COVID-19の年だった2020年も最後の日。東京の感染者が1300人という知らせを聞いて家内と顔を見合わせる。 2020年はTwitterを使い始めた年だった。6月に再開された講義は全てリモートになったが、立ち話もはばかられる状況だったので何をどうしたらいいかがよ…

計算機の哲学 computer-enhanced phylosophy

1)正確な表現ではないが客観的存在と主観的存在にわけるとすると、まず主観は現象学的経験からわかるとおり、「夢か現かわからない」がゆえに純粋な意味での(あるいは厳密な意味での)因果は存在しないという主張が可能である。また客観も、それが存在で…

社会システム

今日書かれるブログの8割は、東北大震災から7年がたったことについてどこかに書いてあるだろう。私の場合、2011.3.11は、たまたま学生室で打ち合わせをしていたので難を逃れたが、居室にあった天井まであるスチールの本棚が私の机に倒れていて、部屋に戻っ…

未来予測をわらえ

研究室の大掃除と忘年会が終わり、今日の昼までに年賀状も済ませて、遅ればせながら新年を迎える気分に転換です。 久しぶりに小飼弾さんのブログを見たところ、新著(数学者の神永さんとの共著)の話が出ていた。checkしたら面白そうだったので注文したとこ…

存在論の帝国に外部はない

シベリア高気圧がやや後退したらしくて暑さも一服。内田樹の「他者と死者」を読む。他者と死者―ラカンによるレヴィナス (文春文庫)作者: 内田樹出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2011/09/02メディア: 文庫購入: 3人 クリック: 18回この商品を含むブログ (19…

それは存在しないものという概念を発明したことです

今日はいいお天気で(ほぼ)雑用がなくて、割とスムースに論文が書けた。たまにボーっと青空を見ると、キャッシュがクリアされて文章製造装置が動き出す感じがする。 青柳いづみこの「グレン・グールド 未来のピアニスト」を読む。グレン・グールド―未来のピ…

ハワード・ジンの思い出

あっという間に立春で沈丁花のつぼみも随分と膨らんでいる。 ノーム・チョムスキーの「アメリカを占拠せよ」「すばらしきアメリカ帝国」を読む。アメリカを占拠せよ! (ちくま新書)作者: ノームチョムスキー,Noam Chomsky,松本剛史出版社/メーカー: 筑摩書房…

脳よりも心が広いことについて

無事に年賀状書きを終える。思い切ってプリンターを買い換えたので随分楽になった。 アンディ・クラークの「現れる存在」を読む。現れる存在―脳と身体と世界の再統合作者: アンディ・クラーク,池上高志,森本元太郎出版社/メーカー: エヌティティ出版発売日: …

再帰、言葉、無限、部分と全体

朝早くから仕事をはじめ、気分転換に裏の公園の小道をとっつきまで行って戻ってくる。どんぐりが落ちている。 竹中均の「精神分析と自閉症」を読む。精神分析と自閉症 フロイトからヴィトゲンシュタインへ (講談社選書メチエ)作者: 竹中均出版社/メーカー: …

意味、暴力、神

秋らしい一日で日差しが透明。 村上靖彦の「レヴィナス 壊れものとしての人間」を読む。【現代思想の現在】レヴィナス ---壊れものとしての人間 (河出ブックス)作者: 村上靖彦出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2012/08/11メディア: 単行本購入: 1人 ク…

意識する心

金曜日に新橋で古い友人に会っていろいろな話をした。変わらない友達というのはいいものである。 デイヴィッド・チャーマーズの「意識する心」を読む。意識する心―脳と精神の根本理論を求めて作者: デイヴィッド・J.チャーマーズ,David J. Chalmers,林一出版…

内在的論理とストーリーテリング

近くの書店で夏休みの準備に厚めの本を数冊買ってきた。ついでにモカ・バニー・マタルも仕入れる。 佐藤優の「人間の叡智」を読む。人間の叡智 (文春新書 869)作者: 佐藤優出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2012/07/20メディア: 新書購入: 2人 クリック: 59…

情理を尽くして語る

内々定祝いで近くの中華料理屋で会食。それにしても暑い。 内田樹の「街場の文体論」を読む。内田樹の「書くこと」についての最終講義。共感することしきり。 「情理を尽くして語る。僕はこの『情理を尽くして』という態度が読み手に対する敬意の表現であり…

歩哨的資質、死ぬ言葉

火曜日には娘の試験も終わるので、ほおずき市に行こうと思う。内田樹の「街場の読書論」を読む。街場の読書論作者: 内田樹出版社/メーカー: 太田出版発売日: 2012/04/12メディア: 単行本購入: 3人 クリック: 21回この商品を含むブログ (43件) を見る「司法や…

コンピュータは自身で進化することができるのか

娘の古文と漢文の受験参考書選びに付き合う。ぱらぱらと見て、何だか随分様変わりしたという感じがする。もっとも大学の生協に並んでいる数学や物理の専門書も随分変わってきたので、今さら驚くことではないのだろう。 田中久美子の「記号と再帰」を読む。記…

主客の一致という謎

入梅。隣の家も前の家もあじさいの盛り。北鎌倉のあじさい寺が懐かしい。 竹田青嗣の「完全解読フッサール『現象学の理念』」を読む。完全解読 フッサール『現象学の理念』 (講談社選書メチエ)作者: 竹田青嗣出版社/メーカー: 講談社発売日: 2012/03/09メデ…

果てしなき探究

昨日は研究室でバーベキューをしてたくさん食べた。晩御飯が食べられなかった。天気も頃合いで運がよかった。 カール・ポパーの「果てしなき探究」を読む。果てしなき探求〈上〉―知的自伝 (岩波現代文庫)作者: カール・R・ポパー,森博出版社/メーカー: 岩波…

合理性と合理的な批判を擁護するために

金曜日、仕事を早めに終えて、国立劇場へ文楽を観に行く。傾城反魂香、艶容女舞衣、壇浦兜軍記。住太夫さんはお元気だったし、吉田蓑助のお園は想像以上に良かった。初夏の夜の爽やかな空気。 カール・ポパーの「フレームワークの神話」を読む。フレームワー…

ソウルダスト

水がないとは不便なもので、昨日は危うく風呂に入り損ねるところだった。 ニコラス・ハンフリーの「ソウルダスト」を読む。ソウルダスト――〈意識〉という魅惑の幻想作者: ニコラス・ハンフリー,柴田裕之出版社/メーカー: 紀伊國屋書店発売日: 2012/04/27メデ…

祝福すること

朝は空気がひんやりして気持ちがよかったので、久しぶりに1時間ほど散歩をしてきた。 内田樹の「呪いの時代」を読む。呪いの時代作者: 内田樹出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2011/11メディア: 単行本購入: 5人 クリック: 79回この商品を含むブログ (75件) …

数学者の哲学、哲学者の数学

昨日あたりから花粉が飛んでいるのだろうか、のどや鼻が何だか熱っぽい。いつものことだが桜が咲くまでの我慢の季節だ。 砂田、長岡、野家の「数学者の哲学、哲学者の数学」を読む。数学者の哲学+哲学者の数学―歴史を通じ現代を生きる思索作者: 砂田利一,長…

日本の文脈

庭の鉢の沈丁花のつぼみはまだ薄緑だが、少しずつ膨らんできている。送別会の予約も終わった。 内田樹と中沢新一の「日本の文脈」を読む。日本の文脈作者: 内田樹,中沢新一出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)発売日: 2012/01/31メディア…

数学内外での不完全性定理

卒論の季節。早々と一人が書き上げて少し楽になった。あとの4人はこれからがラストスパート。 トルケル・フランセーンの「ゲーデルの定理」を読む。ゲーデルの定理――利用と誤用の不完全ガイド作者: トルケル・フランセーン,田中一之出版社/メーカー: みすず…

支配的モナドの創発・閉鎖・不確実性

良い天気の日曜日。特にこともなく、一日ゆっくり過ごす。水遣りをしていたら沈丁花のつぼみがついているのに気がついた。 西川アサキの「魂と体、脳」を読む。魂と体、脳 計算機とドゥルーズで考える心身問題 (講談社選書メチエ)作者: 西川アサキ出版社/メ…

仏教における愛の否定

今日の午後は学生達を自宅に呼んでの忘年会。午前中は賀状書き。絵に描いたような年の瀬だが、今年やることはまだまだ残っているのも例年どおり。 呉智英の「つぎはぎ仏教入門」を読む。つぎはぎ仏教入門作者: 呉智英出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2011/…

心は脳の中だけに閉じ込めておくことはできない

アイルランド音楽と朗読を聴きに行った。久しぶりに漱石の「夢十夜」の文章に触れた。 河野哲也の「意識は実在しない」を読む。意識は実在しない 心・知覚・自由 (講談社選書メチエ)作者: 河野哲也出版社/メーカー: 講談社発売日: 2011/07/12メディア: 単行…

語りえぬものを語る

昨日は娘のリクエストで「もちもちの木」にラーメンを食べに行った。なかなかおいしい。 野矢茂樹の「語りえぬものを語る」を読む。語りえぬものを語る作者: 野矢茂樹出版社/メーカー: 講談社発売日: 2011/07/08メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 32回こ…

形式的なものと直観的なものとの弁証法

反貧困のデモが世界各地で起きていることが盛んに報じられている。これはどういう流れなのかとできるだけ巨視的に見ようとしている。 パレ・ユアグローの「時間のない宇宙」を読む。時間のない宇宙―ゲーデルとアインシュタイン 最後の思索作者: パレユアグロ…

反証可能性理論の土台

水曜日の生命倫理学で加藤先生の講義を聞く。1)生命倫理の問題は、既存の社会制度(それは法体系により支えられている)の外部に、新しい技術によりもたらされた空白地帯から生じる 2)法体系には、大陸型の成文法と英米型の判例法があり、上記の空白に速…

なぜ「語りえぬものについては、沈黙しなければならない」のか

昨日は田町で会合がありでかける。暑さがぶりかえしたねぇというのがお互いの挨拶代わりで、新潟から来られた先生は、温度は同じくらいでも空気が違うと言われる。 野矢茂樹の「『論理哲学論考』を読む」を読む。ウィトゲンシュタイン『論理哲学論考』を読む…